更正・決定等の期間経過後の相続開始前7年以内の贈与でも相続税の課税価格に加算すべきか
令和5年度の税制改正により、暦年課税において贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間が相続開始前3年間から7年間に延長されています。
相続税の税務調査に来るのは、相続が発生しておおむね2年が経過した後になることが通常であるため、税務調査時点から遡れば9年以上前の贈与についても加算の有無の調査対象となります。
ところで、税務署長は、申告内容が調査と異なる場合には「更正」、申告書の提出がなかった場合には「決定」を行うことができます。贈与税の更生・決定ができる期間(=除斥期間)は通常の場合は6年、偽りその他不正行為がある場合には7年とされています。
相続開始前7年以内の贈与が、相続税の税務調査時点からみて更生決定等の期間を経過していた場合には、相続財産に加算する必要があるのでしょうか?贈与税の除斥期間はすでに徒過していますから、贈与税が新たに課されることはありません。いわゆる時効を迎えた贈与についても生前贈与加算の対象になるのか疑問が生じます。
この点を明らかにする法令通達等はありませんが、課税実務上、除斥期間を経過した贈与についても相続財産への加算対象にすることとされています。
その理由は、相続税法19条の文言にあります。相続税法第19条には、相続開始前7年以内に被相続人から贈与によって取得した財産を相続財産に加算する旨規定されているのみで、その加算される贈与財産に係る贈与税額それ自体につき更正の期間を徒過したものを除く旨の除外規定がないから※1です。
したがって、相続発生前7年以内の贈与であれば、申告の有無や贈与税が課税されたか否かを問わず、すべて加算することになります。
※1 国税不服審判所・昭和57年1月20日裁決。この裁決は改正前の「相続開始前3年以内の贈与」に係るものですが、令和5年の税制改正後も除外規定が定められていないため、改正後においても規範性があると考えられます。
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