2023年1月25日

相続時精算課税~特定贈与者が複数の場合の110万円の基礎控除の取り扱い

 2023年度の税制改正で贈与税制が大きく見直され、暦年贈与が課税強化される一方、選択制の相続時精算課税の使い勝手は良くなります。

 改正の骨子は次のとおりです。

【相続時精算課税】

①暦年課税と相続時精算課税の選択制はそのまま継続される。

②暦年課税の基礎控除とは別途、毎年、110万円まで課税されない。

③贈与された土地・建物が、災害により一定の被害を受けた場合は、相続時に再計算する。

【暦年課税】

①相続開始前贈与の加算期間を3年から7年に延長する。

②延長した4年間の贈与については、総額100万円まで相続財産に加算されない。

 少額贈与については追求しない趣旨から、相続時精算課税では毎年110万円、暦年贈与では延長された4年間の総額で100万円までは課税されません。

 なお、相続時精算課税では、特定贈与者ごとに、課税価格から毎年の基礎控除を差し引き、累計で2,500万円の特別控除額をマイナスして20%の税率を乗じ贈与税額を計算し、その特定贈与者の死亡時に精算をすることから、年110万円の基礎控除額は特定贈与者ごとの額ではないかとの疑問が生じます。

 この点、本改正では、複数の特定贈与者から贈与を受けた場合は、それぞれの贈与額に応じて110万円を按分することとされています。

 したがって、相続時精算課税を適用すれば父母から毎年合計220万円まで無税で贈与できる、ということにはなりません。相続時精算課税の基礎控除はあくまで受贈者1人当たり年間110万円であり、現行の暦年贈与の基礎控除と同じになります。

2023年1月25日 (担当:後 宏治)

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