2022年6月14日

釈然としない取得条項付株式評価の裁決

 サザビーリーグの創業者らが東京国税局から受けた追徴課税処分(約80億円)を巡り、国税不服審判所が全額を取り消す裁決(2022年1月20日)をしたことは、2022年2月頃に新聞等で取り上げられました。創業者らが、取得条項付株式を取得条項に定められた算定式に従って発行会社に譲渡して申告したところ、国税側が取得条項に定める算定式は不合理であり、発行会社の純資産価額に基づく算定式によるべきとして争いになったものです。

 その後専門誌においても、種類株式の税務上の時価が争点となった初めての事例として注目されたところですが、その裁決内容を見ると釈然としない点があります。まず審判所の判断を荒っぽくまとめると、①国税側が主張する純資産価額を基礎とする方法には合理性がない、②そうかといって取得条項に定めた算定式による価額が「常に当然に」時価であるともいいきれない、③類似業種比準方式により計算したら今回の譲渡価額と大きな開差はないので追徴課税を取り消す、となります。

 それでは、類似業種比準価額が譲渡価額と乖離していたら、どのような結論としたのでしょうか?確かに取得条項に定めた算定式が「常に当然に」認められるわけではないことは理解できますが、算定式を含む取得条項全体が合理的なものであれば、創業者らが主張する通り「不特定多数の当事者間で(途中省略)同額を超える価額で取引を行うことは合理的に考えてあり得」ないため、類似業種比準方式などによるまでもなく、算定式に基づく譲渡価額を適正と認定して良かったのではないでしょうか。

2022年6月14日 (担当:平野和俊)

ページトップへ