2020年10月 5日
配偶者居住権の譲渡損失は給与所得との損益通算が可能
2020年4月1日から施行されている配偶者居住権※1は、対価を得て合意解除することにより消滅させることが可能であり、その対価は総合課税の譲渡所得として課税されます(新措通31・32共-1)。
総合課税の長期譲渡所得は、その2分の1が課税対象となりますので、実質的な最高税率は27.5%(55%÷2)であり、分離課税となる土地・建物に係る長期譲渡所得の税率である20%と比較して不利となる場合があります※2。また、総合課税の譲渡所得とされた場合には、3,000万円控除などの居住用不動産に係る譲渡所得特例の適用を受けることもできません。
このように配偶者居住権の消滅によって譲渡益が発生する場合には、シンプルに居住用不動産そのものを譲渡した場合と比較して、不利となることが多いと言えます。しかし、配偶者居住権の対象とした居住用不動産の取得費が高額で、配偶者居住権の消滅によって譲渡損が発生する場合は、むしろ有利となることが多いです。総合課税の譲渡損失は、給与所得など他の総合課税の所得と損益通算できるからです。
実務上、給与所得などとの損益通算を目的に配偶者居住権を設定することはないと思いますが、取得費の高額な配偶者居住権を合意解除により消滅させた場合には、思わぬ副産物(節税効果)が発生することがあります。
※1 配偶者敷地利用権を含みます。
※2 税率は所得税及び住民税の合計税率であり、復興所得税は無視します。また、短期譲渡所得となる場合の比較は割愛します。
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