2018年8月31日
同族会社株式に関する相続税の巨額否認事案に対して国税不服審判所が納税者の主張を認める
東京国税不服審判所は平成30年4月6日付で、大企業グループオーナーの妻に対する生前の株式譲渡が成立していないとして43億円※1の相続税増額を認定した税務署の処分を一部取り消して、納税者の主張を認めました。
審判所は、上図の通り被相続人から妻に対する平成7年の株式譲渡を認めて株式を相続財産ではないと認定したわけですが、株式の所有者を判断する上で翌平成8年に実行された妻から子への株式譲渡についても判断を下し、こちらの譲渡は成立を認めませんでした。平成7年譲渡と平成8年譲渡の主な違いは下記の通りです。
平成7年譲渡 | 平成8年譲渡 | |
譲渡契約書の署名押印 | 有り | 有り |
譲渡契約書通りの資金移動 | 有り | 有り |
当事者の株式譲渡の認識に関する申述 | 概ね正確 | 不正確 |
以上の通り、平成8年譲渡においても、平成7年譲渡同様に譲渡契約書に署名押印が有り、譲渡契約書通りの資金移動が有りましたが、当事者の株式譲渡の認識に関する申述が不正確であるとして譲渡が認められていません。
同族関係者間の取引では、親が勝手に契約書を作成・捺印の上、資金移動して、子供達は実行内容を良く知らされていないことがあります。そのような取引は本裁決のように否認される可能性がありますから留意したいものです。
![1](https://www.u-ap.com/report/images/vol36/image_vol36_2.gif)
※1 税務通信3512号2018年6月25日
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