2016年12月26日

結局存続するタックスヘイブン対策税制のトリガー税率20%
~平成29年度税制改正より~

 「20%トリガー税率が廃止されて、受動的所得は原則として合算課税される見込み」と喧伝されたタックスヘイブン対策税制の改正ですが、平成29年度税制改正大綱によると、事実上トリガー税率は存続することとなりました。

 改正の概要は下表の通りです。現行税制の適用除外基準と同様の「経済活動基準」を満たす会社(経済合理性を有して事業活動を行っている会社)であれば租税負担割合20%未満の場合でも合算課税されるのは受動的所得(利子、配当など)のみとなります。また、経済活動基準を満たさない会社(資産運用だけを行っている会社など)で租税負担割合20%未満の場合には、全所得が合算課税されます。これらは従来の取扱いと基本的には同じです。

 そして従来と異なる取扱いを受けるのが、新たに定義される「ペーパーカンパニー等」です。ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュボックス※1及びブラックリスト国所在の会社は「ペーパーカンパニー等」に該当して、租税負担割合が20%以上30%未満の場合でも全所得が合算課税される取扱いに変更されます。ペーパーカンパニーとは、「事務所等を有さず、かつ、本店所在地国において事業の管理・支配・運営を自ら行っていない会社」とされていますので、これまで富裕層が租税負担割合20%ちょっとの国を選んで設立していた資産管理会社はこれに該当する可能性があります。

 この改正は外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。今回の改正を受けて、合算課税により申告するのか、合算課税申告するとして株主構成をどうするのか、ペーパーカンパニーに該当しない対策をとるのか、経済活動基準を充足させるのか、など早めの検討が必要です。

2016年12月26日 (担当:平野和俊)

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※1 総資産に対する有価証券等の割合が50%を超え、かつ、総資産に対する利子・配当等の割合が30%を超える外国関係会社。

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