2016年11月 8日
富裕層をねらい打ちした国税庁の海外情報収集~国際戦略トータルプランより
平成28年11月25日、国税庁は海外への資産隠しや国際的な租税回避などに対応する「国際戦略トータルプラン」を公表しました。このなかで、国税庁は富裕層への対応を重点課題として掲げ、具体的には、下記の4つの取組を実施することを明示しています。
①富裕層に対する管理・情報収集(個人課税部門と資産課税部門の連携など)
②調査体制(国際税務専門官等の実地調査など)
③富裕層プロジェクトチームの設置
④国外転出時課税への対応(周知・広報、調査など)
とりわけ力説しているのは、海外資産の存在や海外資産から生じた所得及び複雑な取引の組み合わせによる租税回避を把握するため、国外送金等調書等により様々な情報を積極的に収集し管理していくことです。課税当局は海外取引に係る情報を広く集める体制を構築しつつあります。その情報収集制度の全体像は下表のとおりです。
現在、租税条約に基づく情報交換及びCRS金融口座情報自動的交換※1は、日本と世界の主要な国や地域との間ですでに締結・合意されており、今後、わが国の富裕層が海外投資を行う場合、税務当局間の情報網に引っかからずに資金等を移動させることは困難な状況になってきます。
これからの海外取引では、これらの情報収集制度を踏まえ、どのような情報が課税当局に提供されるのかに留意し、適正な申告に努める必要があります。

※1 CRS金融口座情報自動的交換の詳細については、UAPレポート『「金融口座情報の自動的交換」における実質的支配者とは誰のことか』を参照。
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