無償減資により欠損填補を行った法人を被合併法人とする適格合併の落とし穴!?
~欠損填補手続きの実施時期にご注意を~
救済型の組織再編成として親法人(以下、「合併法人」)が欠損を抱える子法人(以下、「被合併法人」)を吸収合併(以下、適格合併を前提とします。)する際に、被合併法人で欠損填補手続きをした上で合併を行うことがしばしばあります。これは旧商法時代においては欠損法人を被合併法人として吸収合併をすることができなかったことの名残によるものと思われますが、実はここに思わぬ落とし穴があります。その落とし穴とは、法人住民税均等割増加の回避策がとれないことです。
そもそも均等割増加の回避策とは、平成27年8月17日付けUAPレポートで紹介しました欠損填補に伴う無償減資による均等割の節税策のことです。合併により資本金等の額が増加した場合、それを判定基礎とする均等割も当然連動して増加する事が想定されます。そこで均等割の増加を回避するために合併と併せて減資も検討されますが、平成27年税制改正以前は減資を行ったとしても、均等割を減らす効果はありませんでした。しかし改正によって、欠損填補を行うための無償減資手続きを行えば、資本金等の額から欠損填補額を控除した金額により均等割の判定をすることが可能となったため、現在では減資手続きが均等割節税のための有効策足りえる状況です。
しかし改正後であっても上述の無償減資手続きが均等割の節税に結びつかないケースがあります。それが冒頭でも説明しました被合併法人が合併前に無償減資手続きを行ったケースなのです。具体的には、被合併法人が合併前に行った無償減資による欠損填補額は、合併後の合併法人で法人住民税の均等割の判定の際に、資本金等の額から控除することはできないということです。またこの点については、東京都主税局においても「法人事業税・法人都民税Q&A【均等割No.7】」にて明記されております。つまり上述のケースの場合には、被合併法人が行った欠損填補は一切考慮されず、合併後の資本金等の額そのままで均等割を判定する結果となってしまい、均等割増加の回避をすることができません。
したがって合併による法人住民税の均等割増加の回避を念頭に置いて欠損填補手続きを行うのであれば、合併後に行う必要があると言えます。なお合併直前に行った被合併法人の欠損填補のみならず、それ以前に行った過去の欠損填補も均等割判定上は、当然ながら合併後の合併法人にその効果は引き継がれません。例えば子法人において、過去に会社再建目的で無償減資による欠損填補を行っていたことにより、上記改正以後の事業年度において子法人単独で均等割の節税に成功していたとしても、その後子法人が被合併法人となる合併を行うと、合併後の親法人における均等割は、子法人が行った過去の無償減資前の資本金等の額を基礎として判定されることとなり、結果として、均等割の節税効果が消失するので、十分注意してください。
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