任意組合出資持分の譲渡損益の所得区分
任意組合の出資持分を譲渡したときの損益については、現行法令通達上、取扱いが明確にはされていません。実務では、組合財産そのものを持分割合分だけ譲渡したと解し、税務処理することが一般でした。すなわち、組合財産が土地建物であれば、その任意組合出資持分の譲渡に係る所得は、土地建物そのものの譲渡であり、分離課税の譲渡所得にあたると解されていました。
なお、類似の匿名組合出資持分の譲渡損益は、総合課税の譲渡所得であり、したがって他の所得と損益通算できることが、過去の裁決(平成14年7月1日)で明らかになっていましたが、先日、任意組合出資持分譲渡に係る裁決(平成28年3月7日)が公になり、今までの実務の取扱いの適正性が確認されました。
裁決では理由として、任意組合の出資持分(及びその地位)は組合財産に対する持分と不可分一体だから、出資持分の譲渡は、それが表象する組合財産に対する持分の譲渡という性格を有するということをあげています。
注意すべきは、組合財産に現金預金が含まれている場合の取扱いです。任意組合で不動産事業を営んでいるケースでは、組合財産として土地建物の他、運転資金や修繕積立資金などの現金預金が計上されていることが通常です。
任意組合出資持分の譲渡では、別に精算等がなければ、全ての組合財産を持分割合分だけ比例的に譲渡したと取り扱われるので、現金預金も持分割合だけ譲渡したことになります。ただし、現金預金からはキャピタル・ゲインが生じないとされており、その対価分は、税額計算上の収入金額にはなりません。
土地建物の譲渡損は、他の所得とは通算できないものの、同じ土地建物の譲渡益との通算ができます。他の土地建物の譲渡益がある場合で任意組合出資持分譲渡に係る損失があるときには、現金預金対応分の収入を除いて土地建物対応分の譲渡収入金額を算出し、そこから取得費や譲渡費用を控除して譲渡損を計算する必要があります。この場合、現金預金対応分の収入は、税務上、組合財産の現金預金に譲渡者の出資持分割合を乗じて計算されます。
この控除を失念して、出資持分の譲渡による損失の額をそのまま計上すると、その損失額は、現金預金対応収入分の金額だけ少なくなり、その分の通算ができないことになります。こうしたリスクを避けるためには、契約書においてこれを譲渡代金に含める旨を明示するか、現金預金分は出資持分譲渡代金とは別に精算しておくことがいいでしょう。
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