内部造作を行った場合の減価償却方法の注意点
法人が自己所有の建物に内部造作を行った場合には、建物付属設備に該当するものを除き、その内部造作の構造がその建物の骨格の構造と異なっている場合であっても、その建物に含めて建物の耐用年数を適用します。その理由は、建物の税法上の耐用年数は、一般的な内部造作を含めて算定されているからです。したがって、建物が鉄筋コンクリート造で事務所の用に供されているものであれば、内部造作部分についてもその建物の耐用年数50年により償却します。仮に、その建物が既に耐用年数を経過していたとしても、新たに取得した内部造作部分についての耐用年数は50年です。
では、法人が建物を賃借し、その建物に内部造作を行った場合にはどのように取り扱われるでしょうか。この場合については、いずれの減価償却資産に区分されるかについて明確な規定はないものの、自己所有建物について行った内部造作は建物に含めて償却するという、上記の考え方との整合性を取るため、他人の建物への内部造作についても建物として償却するものと考えられます。ただ、他人の建物の耐用年数が何年であるか判断する事が困難なため、判明するならその建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、耐用年数を合理的に見積もる事になります。ただし、その建物について賃借期間の定めがあり、その賃借期間の更新ができないもので、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、その賃借期間を耐用年数として償却することができます。
ところが、実務上は建物に行った内部造作を誤って建物付属設備に区分してしまい、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」別表第一に照らし「前掲以外のもの」として耐用年数10年又は18年として償却してしまいがちです。たしかに、内部造作のうち一部に建物付属設備に該当するものがあります。しかし、それは、その造作が小売店、飲食店、旅館等に取り付けられる簡易なもので、短期間に取替えが見込まれる「店用簡易装備」又は建物の内部に取り付ける間仕切りのうち、取り外して他の場所で再利用できる「可動間仕切り」だけだと一般的に考えられます。本来建物付属設備というものは、建物に固着されており、その建物の効用を増加させるもの又はその建物の維持管理に必要なもので、建物の従物である建具、内部造作以外のものであると考えられているため、「店用簡易装備」と「可動間仕切り」以外の内部造作は原則として建物付属設備には該当しません。
そのため、内部造作のうち建物に含まれるものを建物付属設備として区分を間違えてしまった場合には、最大で建物の耐用年数うち最も長い50年の耐用年数による償却に修正しなければなりません。
なお、平成28年度の税制改正において、平成28年4月1日以後に取得等をする建物付属設備や構築物については、償却方法が建物と同じ定額法に一本化されていますので、同日以後に取得した内部造作について修正が必要な場合には、耐用年数による影響のみになります。ところが、平成28年3月31日以前取得分について区分を間違えた場合には、償却方法が、建物は定額法、建物付属設備は定率法が原則であったため、耐用年数だけでなく償却方法も含めた修正が必要となり、これによる影響は多額に上る可能性があります。
平成28年度の税制改正によって、内部造作の区分を建物付属設備に間違えてしまった場合の影響は緩和されましたが、それでも耐用年数による影響は依然として残っていますので、内部造作の減価償却資産の区分については今後もしっかりとした判断が求められます。
過去のUAPレポート
- レポート検索