平成28年4月1日以後相続における非上場自社株式評価額の上昇
平成28年4月25日、国税庁はそのHPにおいて「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」を公表しました。改正通達では、非上場株式を評価する場合の純資産価額方式で用いる法人税額等相当額の控除割合が38%から37%に引き下げられました。平成28年4月1日以後の相続や贈与により取得した非上場株式の評価においてはこの控除割合が適用されるため、その評価額は上昇することになります。
純資産価額方式は、会社の総資産や負債を相続税の評価(=時価)に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や「評価差額に対する法人税額等相当額」を差し引いた残りの金額により評価する方法です。また、「評価差額に対する法人税額等相当額」は「法人税、地方法人税、事業税、地方特別法人税、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合(=法人税率等の合計割合)」と定められています。
ところで、平成28年度の税制改正により、法人の実効税率が、改正前の32.11%から平成28年度は29.97%、平成30年度は29.74%へと引き下げられ、実効税率20%台が実現されることになりました。この改正により、上記の法人税率等の合計割合の根拠となる税率が変わることから、控除割合が37%への引き下げとなったのです。
気になるのは、法人税率などの連続引き下げがすでに決まっていることから、平成30年度以降においてこの合計割合がさらに引き下げられるのではないか?ということです。
表を見ればわかるように、改正前の詳細な合計税率37.7%と平成28年度の37.2%は、改正通達において、それぞれ四捨五入され38%と37%とされたことから、平成30年度の36.9%はおそらく37%とされるでしょう。つまり、平成30年度以降、法人税率がさらに引き下げられても、控除割合は37%が維持されると考えられます。
過去のUAPレポート「ほとんど下がらなかった中小法人の実効税率~平成28年度税制改正より~」でも述べたように、法人の実効税率引き下げの恩恵は中小企業にはほぼないのにもかかわらず、相続税においては法人税額等相当額の控除割合が下がり、結果として非上場の自社株式の評価額は上昇します。平成28年度の税制改正は、中小企業にとって、騒がれるほど法人有利とされているわけではないみたいです。
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