1億円超の空き家を分割して売却したときの3,000万円特別控除
大変な勢いで増加する空き家の発生を抑えるため、平成28年度の税制改正で、空き家を売却した際の譲渡所得の特別控除の特例(空き家の3,000万円特別控除)が創設されました。
一定の要件を満たせば、相続により生じた古い空き家(昭和56年5月31日以前に建築の家屋)であって旧耐震基準しか満たしていないものに関し、相続人が必要な耐震改修または除却を行った上で家屋や土地を売却した場合、その譲渡所得について3,000万円の特別控除を受けることができます。
築古の空き家であっても譲渡のときにすでに今の耐震基準を満たしていればそのまま売却して3,000万円控除を受けることができることはもちろんです。そうでない空き家でも、上述のとおり、耐震リフォームして売却する、または、解体により更地にしてその土地を売却することで3,000万円控除を受けることができます。
主な適用要件は次のとおりです。
①相続した家屋は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋(マンション等を除きます。)であって、相続発生時に被相続人以外に居住者がいなかったこと。
②譲渡をした家屋や土地は、相続時から譲渡時点まで、居住、貸付け、事業の用に供されていたことがないこと。
③譲渡価額が1億円を超えないこと。
都市部では譲渡対価が1億円を超える空き家の売却もたくさん生ずることとなりますが、これらについては、対価要件を満たさないため特別控除の適用はありません。
そこで、売却を複数回に分け1回あたりの対価を1億円以下にして、特例の適用を受けようとする租税回避が考えられます。
例えば、1億2,000万円の空き家につき、①最初の売却を2,100万円で行い特例の適用を受けず、次の9,900万円についてのみ控除を受ける、逆に、②最初の売却を9,900万円として3,000万円を控除し、残りの2,100万円分の売却は特例適用を受けない、などという場合です。
改正法では①の2,100万円分を適用前譲渡、②の2,100万円分を適用後譲渡と整理し、①については9,900万円の対象譲渡と適用前譲渡の対価を合算して1億円を超えるかどうかを判定し、②については、最初の対象譲渡をした年の翌年1月1日から3年後の12月31日までの適用後譲渡の対価について、対象譲渡の金額9,900万円と合計して判定することにより、租税回避を防止しています。
要するに、分割された空き家の譲渡価額は一体分として合計して1億円超要件を満たすかどうかを判定することとなっています。
分割して有利に売るには、特例の適用を受けた最初の譲渡の日からジャスト3年経過した後の次の年からということになります。
なお、この特例の適用期限は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間の譲渡とされており、また、特例対象となる譲渡は、相続の時から相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12 月31 日までの譲渡とされていますから、平成25年1月2日~平成26年1月1日に相続が開始していた場合には、平成28年4月1日~平成28年12月31日までの譲渡が3,000万円特別控除の対象となります。
このように制度創設前に開始した相続であっても、譲渡の時が平成28年4月1日以降であれば、有利な特例の適用が可能とされていますから、時機を逃さず空き家を処分することが大切です。
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