特別目的会社を用いた消費税節税スキームの終焉?(平成28年度税制改正より)
平成28年度税制改正により、遂に特別目的会社(以下、「SPC」)を用いた節税スキームが終焉を迎えそうです。平成25年7月22日UAPレポートでも未稼働法人を用いた消費税節税スキームを簡単にご紹介しましたが、このスキームに対して国のメスが入ることとなるためです。
その改正内容は、平成28年4月以降、簡易課税※1を適用してない課税事業者が高額資産(税抜で1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産※2)の課税仕入れを行えば、その課税仕入れを行った年を含めて3年間は免税事業者や簡易課税適用事業者に変更できないという取扱いです。これにより在庫SPCのような未稼働法人を用いた節税スキーム(不動産等の高額資産の課税仕入れを行い消費税還付を受けた上で、翌期以降に簡易課税適用事業者や免税事業者に変更して不動産売却や売上等に係る消費税額を節税するスキーム)が封じられることになります。
ここで平成28年度税制改正の最大の特徴は、平成22年度税制改正※3にみられた「課税事業者となってから2年間の間に課税仕入れを行えば・・・」という年数制限が排除された点です。つまり対象となる資産の課税仕入れを行えば、どのタイミングで行っても3年間は簡易課税適用事業者や免税事業者に変更できない点が最大の特徴と言えます。弊社レポートでも紹介した通り、現状では課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となってから2年を経過した後に課税仕入れを行えば、平成22年度税制改正の規定の適用を受けないため依然として節税スキームが実行可能でした。しかし、それが今回の税制改正により排除されることになります。
また自販機スキームで見られた消費税還付スキームについても同様に封じられます。理由としては、レジデンス用不動産の課税仕入れを行えば、どのタイミングであっても3年間は免税事業者に変更できないため、結果として「課税売上割合が著しく変動した場合の調整対象固定資産に関する仕入れに係る消費税額の調整(消費税法第33条)」規定の適用対象となってしまい、還付を受けた消費税の取り戻しが行われるためです。
つまり今回の税制改正は平成22年度税制改正で埋め切れなかった隙間を完全に塞ぐ役割を担う改正と言えます。そして過去の変遷※3でも見られた消費税節税スキームに関するいたちごっこに終止符が打たれたと言って良いのではないでしょうか。
※1 消費税額の計算において、課税売上高に6段階に分けたみなし仕入率を乗じて計算した金額を仕入税額控除とする簡便的な方法をいい、度々益税の問題が会計検査院より指摘されておりました。
※2 棚卸資産以外の固定資産で税抜で100万円以上のものを指します。
※3 過去の節税スキームと税制改正の変遷は下記の通りです。
■自販機スキーム
(平成21年11月25日付けUAPレポートにて紹介)
法人設立の期に課税事業者選択届出書を提出して敢えて課税事業者となり、多額の課税仕入れによる消費税還付を受けて、3期目以降は免税事業者に戻り還付消費税の取り戻しが発生しないようにするスキーム。
■平成22年度税制改正
(平成22年1月28日付けUAPレポートにて紹介)
課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となってから2年間の間に調整対象固定資産の課税仕入れを行ったら、その提出した年を含めて3年間は簡易課税適用事業者や免税事業者に変更できないという取扱い。このため自販機スキームにおいては、上述した消費税法第33条の規定の適用を受け、1年目に受けた還付消費税の取り戻しが行われ、またSPCスキームではイグジットで簡易課適用事業者や免税事業者になることでの消費税の節税がブロックされる。
■未稼働法人(在庫SPC)を用いた節税スキーム
(平成25年7月22日付けUAPレポートにて紹介)
課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となって2年間を経過してから、調整対象固定資産の課税仕入れを行えば、上述した3年間の縛りを受けない。このため自販機スキームにおいては、上述の消費税法第33条の規定が適用されないため、1年目に受けた還付消費税の取り戻しが発生せず、またSPCスキームではイグジットで簡易課税適用事業者や免税事業者になり節税することが可能となる。
■平成28年税制改正大綱(今回)
過去のUAPレポート
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