2015年12月29日

「個人間で借地権を使用貸借した場合の課税関係と実務上の注意点」

 他人の土地の上に建物を建てる場合、権利金を支払う取引上の慣行がある地域においては、借地権の設定に際して権利金を授受します。権利金の授受がない場合には、税務上原則として、地主は借地人から権利金相当額を受取り、その金額を借地人に寄付したものとして、権利金の認定課税がなされます。また、借地人は地主から権利金相当額の贈与を受けたものとして、受贈益課税がなされます。

 ところが、親の土地の上に子が建物を建てる場合のように、地代も支払わず権利金も支払わない個人間の使用貸借については、権利金の認定課税及び受贈益課税がなされることはありません。相続税関係個別通達※1により、個人間で使用貸借による土地の借り受けがあった場合には、その土地の使用権の価額はゼロ、すなわち、課税すべき経済的利益はない、と取り扱われているからです。

 では、これが「土地の上」ではなく「借地の上」ではどうでしょうか。例えば、親が借りている借地の上にある親の自宅を取り壊し、子が新たに建物を建てる場合、地代及び権利金の授受をしないときは、権利金の認定課税及び受贈益課税はなされるのでしょうか。

 同通達によると、その借地権の使用貸借に係る使用権の価額も、ゼロとして取り扱われることとされています。すなわち、地主と親との間において設定された借地権を子に転貸した場合で、借地契約の名義を変更せず、子が地代も負担しなければ、権利金の認定課税及び受贈益課税がなされることはありません。

 もっとも、地主と親との間での賃貸借契約においては、借地権の譲渡や転貸は承諾事項となっているケースがほとんどです。そのため、実務上は、借地契約の名義を変えず、借地権を転貸できるように、地主との事前交渉が必要となります。ちなみに、親から子に名義を変更した場合には、借地権の贈与となり、名義変更がなくとも子が地代を負担した場合には、転借権の贈与になります。

 また、借地権の転貸をしてから数十年経つと当時の事情を失念していまい、かつ、外形上は他人の土地の上に子の建物が建っているだけなので、親が借地権を所有していることに、相続人が気づかない可能性が大きくなります。そこで、こういう借地権の使用貸借の場合には、地主、借地権者である親、借受人である子の3者連名による「借地権の使用貸借に関する確認書」を税務署に、転貸後速やかに提出することになっています。将来の相続税の申告漏れを防ぐため、この確認書を保存して、事実関係を記録しておくことも非常に大切です。

2015年12月29日 (担当:桑田洋崇)

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※1 「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱い」

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