2015年2月26日

『財産債務調書』の導入で財産開示が強化される?

 平成27年度税制改正法案によると、その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が3億円以上、または、同日において有する国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の対象資産(具体的には有価証券等)の価額の合計額が1億円以上である場合で、同時にその年分の所得金額が2千万円超である場合は『財産債務調書』を税務署長へ提出しなければなりません。

 現行の『財産債務明細書』と異なる点として、1つ目は提出対象者の縮小です。所得金額が2千万円超であったとしても、所有資産が少額であれば提出する必要はありません。

 2つ目は加算税等の特例です。『国外財産調書』と同様に、調書に記載された財産にかかる所得税又は相続税について申告漏れ又は無申告がある場合には、過少申告加算税等は5%減算されます。一方、不提出又は虚偽記載がなされた財産にかかる所得税について申告漏れ又は無申告がある場合には、過少申告加算税等は5%加算されます。ただし、『国外財産調書』とは異なり、不提出又は虚偽記載による1年以下の懲役又は50万円以下の罰金までは科しません。

 つまり、所得税や相続税の確定申告で申告漏れがあると、『財産債務調書』における財産の記載の有無で加算税が減算または加算されることになります(下記図参照)。

 実務上、申告漏れに備えて『財産債務調書』を提出することになりますが、財産を適正に記載をしたものの申告が漏れてしまう場合(図表中のケース①)は少ないと思いますので、まずは、過少申告加算税等の加算(図表中のケース②)を避けるため、他に所得が生じる財産がないかどうかを明確にしておきましょう。なお、この加算が生ずるのは所得税についてのみであって、相続税においては、5%減算はあっても加算はありません(図表中のケース③)。

 もっとも、適正に申告していれば、財産の記載の有無にかかわらず過少申告加算税等が減算されることも加算されることもありません(図表中のケース④)。不提出又は虚偽記載による1年以下の懲役又は50万円以下の罰金は科されませんので、仮に『財産債務調書』の提出を失念してしまったとしても、申告漏れの心配がない納税者にとっては、不利益が生じることはありません。また、万が一申告漏れが生じてしまったときでも、前述のとおり加算が生ずるのは所得税についてのみであり、相続税については何のペナルティーもありません。

 平成28年1月1日以後提出が義務付けられている『財産債務調書』については、適正な申告を心がけておけば、それほど作成に負担を感じる必要はないのかもしれません。

2015年2月26日 (担当:桑田洋崇)

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