海外移住時課税特例(出国時課税特例)の詳細が判明~平成27年度税制改正大綱より~
富裕層から注目されていた海外移住時課税特例(出国時課税特例)が平成27年度税制改正大綱により、その内容が明らかとなりました。概要としては、「有価証券等を所有する居住者が平成27年7月1日以後に海外移住する場合には、その有価証券等を時価で譲渡したとみなして、譲渡所得課税する。」というものです。
大綱によりはっきりした点は下記の通りです。
・平成27年6月30日までに海外移住すればこの課税はない。もちろん既に出国して非居住者となっている場合も課税はない。
・所有する有価証券等の時価が1億円未満の場合には課税対象者とならない。
・国内上場株式だけでなく、非上場株式や外国法人株式も課税対象となる。
・みなし有価証券のうち、合同・合名・合資会社の社員持分や匿名組合出資は課税対象となるが、信託受益権(投資信託などの受益証券を除く。)や任意組合出資は課税対象とならない。
・非居住者が相続・贈与により有価証券等を取得するのは海外移住と類似の効果をもたらすことから、この場合にも相続・贈与時に時価で譲渡したとみなして、譲渡所得課税する。
・担保提供すれば5年間の納税猶予は可能。また別の申請により10年間の納税猶予も可能だが、相続税・贈与税の納税義務判定上は居住者とみなす。
海外移住時課税制度の導入で、企業オーナーの海外移住が困難になりそうです。担保を提供すれば納税猶予が認められるとのことですが、担保の種類が限定された場合には、税務上の理由から「外国移住の自由」が制限されます。また、海外移住よりも現実的に影響が大きいのは、「非居住者相続人に対する相続時のみなし譲渡課税」かもしれません。海外転勤中に自社株を相続した後継者は、譲渡所得税と相続税がダブルで課税されることになります。
国際的な租税回避防止といいながら、企業オーナーいじめになってはいないでしょうか?
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