新たに事業用土地を取得する場合の小規模宅地の特例の適用
平成25年度税制改正により小規模宅地の特例が改正され、平成27年1月1日以降の相続又は遺贈により取得する土地について、以下の2点の取扱いが変更されます。
・特定居住用宅地の適用上限面積240㎡から330㎡への引き上げ
・特定事業用等宅地(特定事業用宅地及び特定同族会社事業用宅地をいいます。)と特定居住用宅地のみを適用対象宅地として選択する場合の適用上限面積の完全併用
そこで、新たに事業を開始しようとする個人が事業用宅地を購入しようとする場合に、個人又は法人どちらで購入したほうが税金の観点で有利かどうか、今回の改正が与える影響を踏まえて考察したいと思います。
前提条件及び各ケースの財産評価額は、それぞれ以下の通りになります。
【前提条件】
・居住用宅地及び事業用宅地
・法人B(土地購入前)
発行済株式数:10,000株、L割合:小会社(0.5)、1株当りの類似業種比準価額:5,000円、
1株当りの純資産価額:14,000円
【財産評価額比較】(単位:千円)
個人又は法人で取得した場合を比較すると、改正前後ともに個人で取得した方が財産評価額は小さくなり、相続税上有利となります。その差額は改正前で7,500千円、改正後で55,500千円です。改正後の方がその差額は非常に大きくなります。これは、改正後は個人で事業用宅地を取得すると居住用宅地と完全併用して小規模宅地の特例の適用が受けられるためです。
ところで現在の実務では、今回のケースのような場合には個人よりも法人で取得することがほとんどです。個人で取得した方が財産評価額を7,500千円小さくできるにもかかわらずです。これは、7,500千円くらいの差額であれば、法人で取得することで相続税以外の節税メリットを受けた方が、相続税、所得税及び法人税全体で見た場合はその税負担を小さくできるからです。具体的には、法人からの給与支給に伴う給与所得控除、法人税率との税率差、法人株価評価時の評価差額に対する法人税額等に相当する金額の控除などを利用した節税メリットです。
しかし改正後は、前述の通り個人取得と法人取得でその財産評価額の差額は55,500千円と非常に大きくなります。従って、今までのように法人で取得した方が節税メリットは大きいとは簡単に判断できなくなります。今回の改正により個人又は法人いずれで取得した方が有利かどうか、総合的にシミュレーションした上で判断することが従前以上に重要になります。
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