大会社の株式保有特定会社判定基準の改正
平成25年5月27日に取引相場のない株式等の評価について、大会社における株式保有特定会社の判定基準が株式保有割合25%以上から50%以上に改正されています(評基通189(2))。今回の改正は、東京地方裁判所(平成24年3月2日付)、及び東京高等裁判所(控訴審、平成25年2月28日付)の敗訴判決から、国側が上告断念して行われたものとなります。平成2年の判定基準設定当初と比べて今日では大会社の株式保有状況が変わっており(株式保有割合:平成2年度約8%→平成15年度約16%)、資産構成が株式に著しく偏っている株式保有特定会社の判定基準として当初の25%以上を現時点で適用することは合理性に欠ける、と両判決で判断されたためです。その判断を受け、判定基準が50%以上に改正されました。
会社規模が大会社で、高収益であるがスピード感の異なる2つの部門を有する会社の株式をオーナーが所有している場合に、各部門の事業環境の変化に対して機動的に経営判断をするために、両部門を切り分けて分社化することで各部門の成長を促進する事業再編(分社型分割)が行われることがあります(下図)。しかし、B部門を分社化した結果、事業会社甲において総資産に占める株式保有割合が25%以上となり、事業会社甲が株式保有特定会社に該当してしまうことがあります。
ところで、大会社が株式保有特定会社に該当する場合は、その会社の株式評価は原則として1株当たりの純資産価額(相続税評価額)によります。一方で株式保有特定会社に該当しない場合には、類似業種比準方式により評価することになります。一般的に、純資産価額方式による評価方法の方が類似業種比準方式よりも大きな価額で評価されます。従って、B部門を分社化した結果、事業会社甲が株式保有特定会社に該当することとなった場合には、純資産価額方式により評価することとなるため、分割後の株式評価が大きくなり、将来の相続時に株式評価を行う際には不利に働くことになってしまいます。このことが障害となり、その事業再編を行うことにオーナーは二の足を踏むことが多々ありました。
つまり、事業環境の変化に柔軟に対応するために部門を分社化したいが、分割後に親会社が株式保有特定会社に該当し、将来の相続時に不利に働く可能性があるため敢えて分社化を行わないケースです。今回の改正により、大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準値が25%以上から50%以上に上がっています。従って、親会社甲社が株式保有特定会社に該当しないようにする分割を実行できる可能性が高まっています。従前の判定基準では株式保有特定会社となるため分割による事業再編を避けていた方にとっては、改めて分割による事業再編を再度検討してみる価値がありそうです。
図.分社型分割
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