給与増加税額控除制度における棚卸資産に含まれる給与の取扱い
平成25年度税制改正の目玉の一つとして、「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度」が所得拡大促進税制として創設されています。「ヒト」への投資の減税制度で、従業員個人の所得水準を底上げする観点から、給与支給額を増加させた場合の支給増加額について、その10%の法人税額控除(上限は当期の法人税額の10%、中小企業者等は20%)が認められるものです(措法42の12の4)。
3月決算企業を前提とすると、その適用要件は、①当期の給与総額が基準年度であるH25年3月期の給与総額の105%以上であること、②当期の給与総額が前期の給与総額以上であること、③当期の1人当たりの平均給与が前期の平均給与以上であること、の3つです。つまり、当期の給与総額がH25年3月期に比べて5%以上増加し、かつ、給与総額と平均給与の二つとも前期以上であれば要件を満たします。
ところで、税額控除計算の基礎となる給与は、賃金台帳に記載されている人に対する給与で、その法人の「損金の額に算入されるもの」に限定されています(措法42の12の4②三)。
つまり、支払った給与であっても、当期の損金に算入されないものは対象外となります。すると、問題は、期末棚卸資産に含まれている給与の取扱いです。当期に支払った給与であっても、適正な原価計算により配賦を行うことで、期末棚卸資産にも一定割合の給与が含まれることになるのですが、この部分は期末に資産として計上され、当期の損金には含まれないため問題となるのです。
この点について、課税当局は、(ア)原則として、期首棚卸と期末棚卸に含まれる給与を本特例の給与等に加減算調整をするが、(イ)例外的に、継続適用を条件に、例えば支給額の確定を基準に計算するなど、一定の合理性の認められる方法により計算している場合にはこれを認める、という取扱いを先日明らかにしました。
棚卸資産から給与額を"引っこ抜く"作業の煩雑さを避ける趣旨で、これにより、調整計算をせずに、発生した給与をそのまま特例計算に用いることができることになります。
この特例は、大企業だけでなく、中小零細企業でも簡易に使うことのできる有利な制度として導入されました。給与を上げる予定のある会社では要注目です。
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