2013年5月28日

外貨建定期預金が自動更新された場合に為替差益は課税されるのか?

 自由民主党の安倍内閣による大胆な金融緩和によって、1米ドルが100円を超える円安基調となっています。この環境下で、外貨建定期預金の満期日が到来し円転した場合には、為替差益に対して所得税または法人税が課税されます。では、円転せずに同一の契約条件で自動更新した場合にも同様に課税されるのでしょうか。

 この点について所得税では、預貯金の元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨により行われる預貯金の預入については、為替差益は計上しないとされています(所得税法施行令167の6②)。さらに、国税庁の質疑応答事例※1に、同一の金融機関でなくとも、同額元本、同一通貨の預入及び払出であれば外貨建資産の保有状態に実質的な変化がないものとして為替差益は計上しないと明示されています。つまり、上記に規定されている要件は、為替差益を計上すべき外貨建取引に該当しないことを明らかにした例示規定であると解され、実務上は「外貨建資産の保有状態に実質的な変化があるかどうか」で判断することになります。

 一方、法人税では、所得税のような明確な規定はありませんので、同一の契約条件による自動更新が、課税すべき取引に該当するかどうかで判断しなければなりません(法人税法22②)。そこで、国税庁の質疑応答事例 ※2を参考にすると、外貨建の借入金を期限延長した場合でも同額・同一条件であれば借入が継続しているため、為替差損益は計上しないと明示されています。つまり、法人税においても「外貨建資産の保有状態に実質的な変化があるかどうか」で判断することになります。

 これにより、所得税・法人税共に同一の契約条件で自動更新した場合であれば、外貨建資産の保有状態に実質的な変化はないものとして為替差益は計上しないことになります。

 では、そもそも「外貨建資産の保有状態に実質的な変化があるかどうか」はどのように判断するのでしょうか。例えば、課税庁では所得税について次のような判断事例を示しています。

① 米ドルを豪ドルに交換した場合※3
→円転のみならず、他の外国通貨への交換であったとしても収入すべき金額として為替差損益を認識すべきとされています。

② 外貨建預貯金を外貨建MMFにかえて運用した場合※4
→新たな経済価値を持った資産に変化したと捉えて為替差損益を認識すべきとされています。

 このように、「外貨建資産の保有状態に実質的な変化があるかどうか」について具体的な判断基準があるわけではありません。しかし、上記事例から、「同一元本かつ同一通貨かつ同一預貯金であれば外貨建資産の保有状態に実質的な変化はない」、「これ以上の変化は外貨建資産の保有状態に実質的な変化があると認定される可能性が高い」と考えておけば、安全に課税関係を判断することができるのではないでしょうか。

2013年5月28日 (担当:桑田 洋崇)

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※1 国税庁質疑応答事例『外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い』

※2 国税庁質疑応答事例『輸入貿易手形借入金の期限延長』

※3 国税庁質疑応答事例『保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合の為替差損益の取扱い』

※4 国税庁質疑応答事例『預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資をした場合の為替差損益の取扱い』

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