2012年12月27日

個人組合員は注意!通達の改正により変わる任意組合等の損益計算

 平成24年8月30日以降締結される組合契約により成立する任意組合、投資事業有限責任組合及び有限責任事業組合については、個人組合員の所得計算方法として原則総額方式※1しか採れないこととなりました。これによって、組合事業に係る損益がいずれか一つの所得区分に集約される純額方式※2では可能となっていた分離課税と総合課税の損益通算といったことが今後は原則不可能となります。これは、任意組合を利用した実質的な損益通算(UAPレポート2011年4月26日参照)に関する東京高等裁判所の判決(平成23年8月4日)で国が全面敗訴となったことを受けて通達が改正されたことによります。具体的には、これまで継続適用を条件に認められていた中間方式と純額方式について、総額法により計算することが困難であると認められる場合にのみ適用可能とする前提条件が追加されました。 

 ところで改正後の通達における、"総額法により計算することが困難であると認められる場合"とはどのような場合なのでしょうか。改正後通達の注書きでは、組合事業の損益額の報告状況、組合事業への関与状況等からみて、組合員において組合事業に係る収支や資産負債等を明らかにできない場合が該当するとされています。これを組合の形態ごとに見ていきますと、投資事業有限責任組合及び有限責任事業組合については、それぞれ業務を執行する無限責任組合員及び会計帳簿を作成する組合員に対して、法人・個人を問わず全組合員について組合員毎に生じた利益の額及び損失の額につき「有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書」を作成の上、毎年翌年1月31日までに税務署に提出させている※3ことから、上記計算書で各組合員に帰属する資産・負債や所得区分を含めた損益が明らかである限りは、原則として総額法により計算することが困難であるとは認められない可能性が高いと考えられます。また、任意組合については上記計算書の作成・提出義務はないため、組合契約で組合員の一部に業務執行を委任している場合の業務執行を行わない組合員に該当し、組合事業に関して十分な損益状況の報告書が作成されていない場合には総額法により計算することが困難であると認められると思われます。

 なお、法人組合員については通達の改正はされておらず、課税上弊害がない限りは継続適用を条件に中間方式と純額方式を採ることが可能です。

2012年12月27日 (担当:吉田暁弘)

1

※1 組合事業の収入金額、支出金額、資産、負債等をその分配割合に応じて各組合員のものとして計算する方法

※2 組合事業について計算される最終的な利益の額又は損失の額のみをその分配割合に応じて各組合員にあん分する方法

※3 所得税法第227条の2

ページトップへ