2012年5月30日

日本振興銀行木村剛元会長が申告漏れ。国税局の主張は通るのか。

 平成24年5月15日付の新聞報道等によると、元会長が振興銀行株式の譲渡について、東京国税局から約2億4千万円の申告漏れを指摘され、元会長はこれを不服として異議を申し立てたとあります。具体的には、元会長が経営破綻前の同銀行株式の譲渡益と経営破綻後の同銀行株式の譲渡損を通算(相殺)したゼロ申告に対して、東京国税局が、「破綻後の株式は譲渡所得の対象となる資産ではないため、通算は認められない。」としたもののようです。

 株式の譲渡所得は、他の所得とは分離して課税されますが、同一年中の株式の譲渡損益であれば通算できますから、株式譲渡益が出ている年に、含み損株式を譲渡して節税するのは常識です。例外的に、破産宣告を受けた非上場会社の株式について、経済的価値を喪失しているため譲渡所得の対象とならないとして、譲渡損失の計上が否認された判例※1がありますが、上場株式については、破綻の認定にかかわらず整理ポストに割り当てられた株式(JAL株式など)の譲渡損失も通算対象として認められています。

 論点としては、①上場株式と非上場株式では、譲渡損失の認定基準は異なるのか、②銀行の経営破綻をもって同行株式の経済的価値の喪失と認定できるのか、ということかと考えられます。今後の動向に注目です。

2012年5月30日 (担当:桑田洋崇)

1

※1 平成18年9月19日付の千葉地裁の判決で、破産宣告を受けた会社の株式の譲渡損失が否認され、その株式が経済的価値を有しているかどうかを、利益配当請求権や残余財産分配請求権等の自益権や株主総会における議決権等の共益権を有しているかどうかで判断しています。

ページトップへ