2011年10月 7日

事業承継税制~風俗会社等の保有制限要件の緩和と実務への影響

 相続が発生したときに、お亡くなりになったオーナーの所有していた同族会社の株式が80%減額評価され、その減額部分の相続税の支払が猶予されるという事業承継の有利な税制度があります。この制度は、非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度と一般に呼ばれています。

 平成23年度の税制改正で、この納税猶予制度の要件が見直され、より使い勝手の良いものになりました。

 具体的には、「①評価減の対象となる同族会社と②その関係者が、③上場会社や風俗営業会社の株式を一定以上保有してはならない」という適用要件(以下、「風俗会社等の保有制限要件」といいます。)が次のように見直されました。すなわち、②の関係者の範囲が、改正前の「親族等(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)」という大変広い概念から、「生計を一にする親族等(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)」へと絞り込みがなされ、要件が大幅に緩和されました(措法70の7の2②一ハニ、措令40の8の2⑧⑨)。

 改正前は、風俗会社等の保有制限要件が厳しすぎたため、実務上、大きな障害となっていました(UAPレポートVol48 参照)。

 たとえば、相続税の申告時には、お亡くなりになったオーナーの子や孫、甥姪から配偶者の兄弟姉妹など「6親等内の血族、3親等内の姻族」に該当している人が、風俗営業会社の議決権を保有していないかを調べる必要がありましたが、改正後は、生計一親族等の株式保有関係のみを調査すれば良いことになり、当初の調査が非常に楽になりました。

 この他、改正前は、子や孫などの結婚により風俗営業会社の株式を保有する人が外から親族等に入って来た場合には、それが相続発生前であるときは、前述のように納税猶予特例が適用できなくなり、相続発生後でも、5年間を経過しない間では、この特例が取り消されることとなっていました(措法70の7の2⑧十六)。このため、この特例を受ける予定のオーナーの場合、身内の結婚にはとても慎重に取り組む必要がありましたが、今般の要件緩和で、生計一の人だけの株式保有関係だけを注意をすれば良くなり、特例を適用し続けることが容易になりました。

 昨年来の相続税の税制改正案には、増税項目が目白押しですが、この改正は、減税項目の改正で、納税者有利になるものです。有利な納税を検討されている方は再び要注目です。

2011年10月7日 (担当:後 宏治)

 

ページトップへ