無償返還届と定期借地権設定、同族会社が社長から土地を借りるならどっち?
「同族会社が社長から土地を借りる場合はどうしたらいいでしょうか。」という相談に対するオーソドックスな回答は無償返還届です。本来、同族会社が建物を建てる目的で土地を借りる場合には、借地権相当の権利金を土地所有者に支払わないといけません(支払わない場合には同族法人は借地権をもらったとして受贈益課税されます)。ただし、土地の賃貸借契約書に「借地人の同族会社は土地を返すときは立退料を請求しません。」という条項を入れて、その旨を税務署に届け出たときは、権利金を支払わなくてもよいとされています(この届出を無償返還届といいます)。一方相続税では、土地は利用や処分に制限を受けているとして更地評価の80%がその相続税評価となりますが、評価減されたこの20%部分は借地人である同族会社の株価計算上、純資産価額に加算されます。
そしてもう一つの方法が、定期借地権を設定する方法です。例えば期間60年の一般定期借地権を設定した場合には、60年後に借地権者が土地を返すことは法律上明らかですから、受贈益課税の問題はなく、無償返還届を提出する必要もありません。また定期借地権が設定された土地(無償返還届が提出された土地と比較するため、保証金や権利金などの一時金を授受しないことを前提とします。)の相続税評価は、期間満了の15年前までは20%の評価減となりますが、残存期間が15年をきると、減額割合は15%~5%と順次減少していきます。そしてこの20%~5%の評価減部分は、無償返還届のときと同様に借地人である同族会社の株価計算上、純資産価額に加算されると当局者により説明されています(平成6年3月17日付国税速報)。
以上のとおり、一時金を授受しないことを前提とすると、無償返還届でも定期借地権でも税務上はほぼ同様の取扱いとなります。なお、無償返還届を提出する場合には一時金の授受は認められませんので、一時金の授受をしたいのであれば定期借地権の設定によることとなります。
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