出資関係図、どこまで記載が必要??
平成22年4月1日にスタートする事業年度から、法人が税務署に提出する申告書には、出資関係図といって、その法人と期末に100%資本関係がある法人・個人を図示した書類を添付することになりました。事業年度は通常1年ですから、この5月から6月にかけて確定申告書を提出した法人から添付が本格化しています。
さて、この出資関係図、100%資本関係がある法人・個人をどの範囲まで記載する必要があるのか、疑問に感じた方も多いのではないでしょうか。今回はこの出資関係図にスポットを当ててみたいと思います。
まず、出資関係図を記載するに当たって実際に問題となるのは、100%資本関係がある範囲を正確に把握できない場合です。この点、国税庁HP ※1では、100%資本関係があるか把握できないケースとして、次の2つの場合を紹介しています。
① 上場企業のように大きな企業グループで、グループ内に外国の法人もある場合
...確かにグループトップの法人でもない限り、グループ全体を正確に把握するのは難しそうです。
② オーナー会社のように100%の株式を持っている個人がいる場合
...個人は親族(6親等血族、3親等姻族まで)を一括りとして考える決まりなので、例えばおじいさんのいとこ(6親等の血族)が別会社のオーナーをしているか、といわれてもそもそもおじいさんのいとこの顔がすぐに出てこなかったりするわけで、親族全員について把握するのは難しそうです。
このほかにも、次のような場合を考えてみました。
③ 企業グループの法人数が単純に多くてグループ全体の把握ができない場合
④ 企業グループの最下層に属しているためグループ全体の把握ができない場合
⑤ 企業グループの加入離脱が多く期末時点でグループ全体の把握ができない場合
⑥ 会社オーナーの親族関係が疎遠で確認することがはばかられる場合
⑦ 会社オーナーの親族関係にトラブルを抱えていて確認することすらできない場合
では、このように100%資本関係があるか把握できない場合に、出資関係図はどのように記載したらいいのでしょう?さきほどの国税庁HPでは出資関係図は原則としてしっかり完成させることとしながらも、上記①②のようにどうしても把握できない場合には、
(1)把握できた範囲で出資関係図を記載すればよい
こととしています。このほかにも、現実的には次のような対応でもありではないでしょうか。
(2)企業グループトップの法人が作成した出資関係図を入手して代用する
(3)自社から企業グループトップまでの100%資本関係をたどる図だけでも記載する
さて、このように見てきた出資関係図ですが、その位置づけは法人事業概況説明書と同じ申告書への添付書類で、添付しなかったことによる罰則はありません。
しかし、罰則はありませんが、1つ注意したいのはグループ法人税制の適用についてです。グループ法人税制とは、100%資本関係がある法人間で取引を行ったときは、通常と異なる特別な課税をしますよ、というものです。ポイントは、取引の相手と100%資本関係があったことを知らなかったとしても適用があることです。ですから、将来その事実が発覚して思わぬ税負担が生じる可能性を避けるためにも、今のうちから出資関係図はできるだけ正確に記載しておくことが大切ですね。
※1 平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制その他の資本に関係する取引等に係る税制関係)(情報)
過去のUAPレポート
- レポート検索