金商法改正で不動産流動化が動き出すか?
金融商品取引法の改正案が国会に提出されていますが、その中に「プロ等に限定した投資運用業の規制緩和」という注目すべき改正案があります。現行法で投資運用業を行う場合には、販売勧誘について第一種金融商品取引業(組合出資持分等については第二種金融商品取引業)の登録、運用について投資運用業の登録が必要です。投資運用業の登録要件は投資家保護の観点から厳格かつ画一的であり、投資家がプロだけに限定している場合であっても未登録業者は投資運用業を行うことはできませんでした。そこで今回の改正で、投資運用業の登録要件を一部緩和した適格投資家※1 向け投資運用業(投資運用業のうち、全ての運用財産に係る権利者が適格投資家のみであって、その総額が一定の金額を超えないもの)という特例を新設することで、投資運用業の立上げを促進することにしたようです。
詳細な内容は政令等を待たなければなりませんが、適格投資家向け投資運用業の概要は次のとおりです。
(1)第一種金融商品取引業の登録を受けなくても、自ら運用を行うファンド持分の販売勧誘が行えるようになります(第二種金融商品取引業とみなされます)。
(2)投資運用業の登録要件と比較して、人的構成要件を厳格かつ画一的な要件から最低限必要な人員等へ、資本金・純財産額規制を5,000万円以上から1,000万円以上へ、株式会社要件を取締役会設置会社で取締役3名以上から監査役設置会社で取締役1名以上へ、と緩和されます。
この特例の新設は不動産流動化スキームのアセットマネージャー(以下「AM」といいます。)にも影響を与えそうです。昨今の不動産流動化バブル崩壊で投資運用業のプレーヤーが退場してしまい、投資助言業のAMではイグジットに向けた売却等の意思決定ができず身動きが取れない事案も散見されます。AMが適格投資家向け投資運用業の登録要件を満たせるのであれば、登録後SPCとの投資一任契約により運用を行うことで、その事案を動かし始めることができます。当然、イグジットだけでなく、新たなスキーム組成にも取り組みやすくなりますので、今回の特例の新設が市場活性化に繋がることを期待します。
※1 適格投資家とは特定投資家その他その知識、経験及び財産の状況に照らして特定投資家に準ずる者として内閣府令で定める者又は金融商品取引業者と密接な関係を有する者として政令で定める者をいいます(新金商法29の5③)。適格投資家の一例として、適格機関投資家、国、日本銀行、上場会社、資本金5億円以上の株式会社、特定目的会社、外国法人などがあります。
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