無対価組織再編制~個人同族グループ内の会社の場合に注意
無対価組織再編成とは株式やその他資産による対価が交付されない組織再編をいい、合併の場合には、①親法人が100%子法人を吸収合併するときや、②100%の兄弟会社が合併するときにおいて、これらの合併の対価の交付が省略されるものが典型的に該当します。
①では、合併法人である親法人が被合併法人である子法人の株主であるため、自社に対してあえて自社の株式を交付する実益がないこと、また、②では、100%兄弟会社の株主は同一の株主であるため、100%保有する子会社の株式をさらに発行する実益がないことから、一般に、対価の交付が省略されます。
無対価合併の課税関係は、対価の交付の省略があったと認められる場合の「省略型」については、税務上、対価の交付がなかった場合でも対価の交付があった場合と同様となるように取り扱われます。すなわち、「省略型」の合併については、その省略がされずに株式を対価として交付したものとして適格判定を行い、「非省略型」合併については非適格合併とされます。
省略型とは、例えば、合併法人である親会社が被合併法人である子会社の発行済株式等の全部を保有する類型などとされ、対価の交付を省略しても、株主間に経済価値の移転がないことが本質的なメルクマールとなります。
ここで注意したいのは、個人同族グループによる100%の完全支配関係を有する兄弟会社間の合併です。例えば、A社とB社の株式について、父が両社の80%、その子が両社の20%をそれぞれ保有する場合で、この両社が無対価合併を行うと非適格になります。
なぜならば、無対価合併における省略型を定める規定は、「一の者が被合併法人および合併法人の発行済み株式等の全部を保有する関係(法令4の3②二ロ)」とされており、「一の者」とは文字どおり「一」の者、すなわち「一人の者」のことであり、その「一人の者」以外の者は含まれないからです。
混同してしまいがちなのは、無対価省略型となる類型における株主の範囲が、一般的な適格要件を判定する場合の株主の範囲よりも狭い点です。
すなわち、合併の適格要件の一つである完全支配関係の規定における「一の者」(=株主等)には、その株主等が個人の場合はその株主等の親族や事実上婚姻関係と同様の事情にある者等の特殊の関係のある個人も含む(法令4の2②、法令4①)と広く規定されていますが、無対価合併の規定には、「特殊の関係のある個人を含む」という規定は定められていません。
合併後も全体としての保有割合は父80%、子は20%で変化せず、株主間で経済的利益の移転はないため、制度の趣旨から考えると、本件合併は適格となってしかるべきだと考えられます。しかし、課税庁の見解では、省略型の類型は条文上限定列挙されており、その文理では何らの付加規定もなく「一の者」としか書いていない以上、その親族等の特殊関係者までこの文言で読み込むことは不可能であるという理由で、やはり非適格であると判定されます。
このように、合併する法人の株主が、完全支配関係における「一の者」に該当する個人のみで複数ある場合の無対価合併は、対価合併と経済実質は同一でも、非適格となってしまうため注意が必要です。
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