原状回復費用の見積計上は被災地復興の一助になるのか
東北地方太平洋沖地震により被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
東北・関東地方に物件をお持ちで、被害を受けた方々も多くいらっしゃると思いますので、今回のレポートでは、今般のような震災で、法人の保有する物件が被災し原状回復費用を支出した場合の税務上の取り扱いについて説明します。
まず、現行法令では、法人が支出した原状回復費用は損金に算入され、また、被災前の効用を維持するための補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用も損金に算入されます。なお、資本的支出か修繕費か明らかでない場合には、30%相当額を修繕費に、残額を資本的支出にすることができます。
一方で、今般の震災では甚大な被害が生じているため、『阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例法』と同程度の税制特定措置の制定が見込まれており、さらに有利な取扱いになる可能性もあります。
仮に、同程度の取扱いが制定されると、過去に支払った法人税が還付されることも可能になります。例えば、震災後1年以内に終了する事業年度において生じた欠損金額のうちに、震災による資産の損失額や原状回復費用がある場合、また、決算日までに確定しなかった原状回復費用で、見積額で損金に算入された金額がある場合には、これら金額の大きさに応じて最大で過去2事業年度の法人税の全部について繰戻還付を受けることができるという特例の導入が見込まれています。
なお、この見積額は、建設業者等からの見積もり金額や被災資産の再取得価額等を基礎として、取得時から被災事業年度終了日まで償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額から同日の被災資産の価額を控除した金額とするなど合理的に見積もった金額であれば、認められることになるでしょう。
平成23年3月以降に決算を迎える法人については、震災による申告期限の延長が認められているので、申告・納付等については急ぐ必要はありません。ただ、決算日以降に原状回復費用の支出が予定されているのであれば、早めにその額を合理的に最大限に見積もることで、還付時期も早まり還付金額も増加することになります。これにより、早急にまとまった還付金を受けることができるので、その金額を原状回復費用の支払いに当てることが可能になります。
平成23年4月5日現在では、今般の震災に関する税制特例措置は制定されておりませんが、今後速やかに公表されると思われます。今後の動向は、国税庁のHP等に注意が必要です。
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