2011年3月 1日

消費税の益税包囲網、今回のターゲットは?

 現在開催中の国会に提出されている「所得税法等の一部を改正する法律案」では、消費税還付スキーム封じが図られた平成22年度税制改正(2010年1月28日UAPレポート参照)。 に続き消費税の益税防止策が2つ盛り込まれています。一つは免税事業者の要件見直し、もう一つは課税売上割合が95%以上の場合の仕入れ税額全額控除に条件をつけるというものです。ここでは前者の免税事業者の要件見直しについて取り上げます。

 法案によれば個人事業者についてはその年の前年1月1日から6月30日までの間の課税売上高、法人についてはその事業年度の前事業年度開始の日から6ヶ月間※の課税売上高が1,000万円を超える場合には事業者免税点制度の利用ができなくなるとされています。つまり、これまで消費税が免税となった資本金1,000万円未満の新設法人や2年前(法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者であっても、前年(法人は前事業年度)前半6ヶ月における課税売上高次第では課税事業者に該当してしまうということです。

 この改正が主にターゲットとしているのは、相当の売上規模があるにもかかわらず、資本金を1,000万円未満に抑えて法人を新設し、最長2年間の消費税免税という恩恵に預かろうという事業者です。相当の課税売上高のある事業者は改正により最長で当初1年間しか消費税免税を受けられないことになります。
 
 ただし、抜け道はあります。直前期前半6ヶ月の課税売上高を集計する煩雑さを考慮して、同期間中に支払った給与等の支払明細書に記載された金額の合計額をもって課税売上高とすることができるとされています。つまり、給与等の支払がないSPCや個人事業者が法人成りしたような場合も1年目の給与等の額を調整することで最長2年間の消費税免税を受けることができそうです。また、直前事業年度が7ヶ月以下の場合は前事業年度ではなく、一定の前々事業年度の課税売上高で判定するとされています。これを考慮して、例えば資本金1,000万円未満で法人を設立し、課税売上高と給与等の金額がともに1,000万円を超えるまで(最長で5ヶ月)の期間を設立第1期、次の7ヶ月を設立第2期とした場合、第1期から第3期までの最長2年間について消費税免税を受けることも理屈の上では可能となりそうです。

 この改正は平成24年10月1日以後に開始する年、事業年度から適用される予定です。

 ※前事業年度が7ヶ月以下その他の一定の場合は前々事業年度(その事業年度の基準期間に含まれるものその他の一定のものを除く)開始の日以後6ヶ月(前々事業年度が6ヶ月以下の場合には、その事業年度開始の日から終了の日までの期間)

2011年3月1日 (担当:吉田暁弘)

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