2011年2月 3日

H23.3月期が100%子会社株式の解散時評価損計上のラストチャンス

 債務超過の100%子会社株式について評価損を計上しその後解散した場合には、現行税制上、親会社は子会社株式評価損を損金に算入した上、子会社の未処理欠損金を引き継ぐことができます。この課税関係には、損失を二重に取り込むことができるとういう問題点があり、近い将来に改正される可能性が高いと考えられていました(参照 2010年11月4日UAPレポート)。 

 こうした状況の下、平成23年度の税制改正大綱が先日公表され、評価損と未処理欠損金の二重取り込み問題に対する制限規定が予想どおり手当てされたことが明らかになりました。

 この制限規定とは、100%グループ内の他の内国法人が次の①~③の場合であるときには、その株式について評価損を計上しない、というもので、改正後は、100%の解散子会社株式に係る評価損の計上ができないことになります。
 ①清算中である場合
 ②解散が見込まれる場合
 ③そのグループ内で適格合併により解散することが見込まれる場合

 ここで注目したいのは、この規定の適用は、平成23 年4月1日以後に行う評価換え等についてなされる、ということです。

 したがって、すでに解散※1 をして清算中である会社や近い将来解散を予定している会社が100%グループ内にある場合、それらの会社の株式に係る評価損を損金に算入する最後の機会は平成23年3月31日の決算期末になります。

 この機会を逃してしまうと、親会社は100%子会社株式等の解散に際しての評価損を計上することはできなくなり、残余財産確定時に未処理欠損金を引き継ぐだけで、清算結了時においては株式消滅損も計上できないことになります。

 ただ、そうは言っても今後どんな場合でも100%子会社の株式の評価損が計上できないわけではなく、解散が見込まれる「前」であれば、今までどおり評価損を損金に計上することが可能です。

 業績不振の100%子会社を保有している親会社は、評価損計上要件を満たすかどうかを毎期末に検討して、解散に至らぬ前の余裕のあるうちに早めの損金処理を行うことが大切です。

1

※1 改正法律案ではH22.9.30 以前の解散についてこの規制の適用除外とする旨の記載がないため、今後の政省令の規定に注目です。

2011年2月4日 (担当:後 宏治)

 

ページトップへ