2010年10月 5日

新寄付税制と取締役の責任

 平成22年10月1日から適用される新寄付税制によって、下記のような法人による完全支配関係がある法人間の寄付金については、課税関係は発生しません。具体的には、寄付した法人側で損金不算入とされるものの、受贈側では益金不算入とするものです。

 従前も、会社分割や配当&出資によって財産を移転することは可能でしたが、それぞれ会社法上の制約・手続きが必要なところ、「寄付」であればいつでも簡単に行えますので魅力的な方法です。また、新寄付税制による寄付によると、同額の利益積立金が移転しますので、受贈法人で資本金等の額を増加させないという効果もあります。

 ではこれからは、組織再編や資本取引によらずに、積極的に「寄付」を活用すべきでしょうか。気になるのは寄付という無償行為がもたらす取締役の責任です。取締役が悪意又は重過失により任務を懈怠して第三者(債権者など)に損害を生じさせた場合には、その取締役は第三者に対し損害を賠償する責任を負います(会429①)。債権者から寄付行為に対して詐害行為取消権(民424)を行使される可能性もあります。税務以外の観点も慎重に検討したいものです。

2010年10月5日 (担当:平野和俊)

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