2010年6月29日

寄附修正事由による子会社株式の簿価修正

 平成22年10月1日以後、法人による完全支配関係がある100%グループ内の法人間で寄附金が生じた場合には、寄附金を支出した法人において全額損金不算入(法法37②、法法81の6②)とされ、また、これを受領した法人において全額益金不算入され(法法25の2)、かつ、その金額が利益積立金額に加算される(法令9①一二)ことになっています。

 この規定により、法人を頂点とする100%グループ内の法人間においては、課税をうけることなく、任意に資産を移転することができます。例えば、図1のように、子法人1が子法人2に無償で資産を移転しても、特に課税関係が発生することがありません。

 ただ、このとき注意したいのは親法人が保有する子法人株式の帳簿価額です。資産の移転により子法人1の資産が減少し、子法人2の資産が増加しますので、子法人株式1の時価(※1)は減少し、子法人2は増加します 。親会社の保有する子法人株式の帳簿価額が寄附以前のものと同じであれば、親法人は、子法人1株式を売却して譲渡損を計上することができたり、子法人2株式を売却して譲渡益を計上することができたりします。

 このような恣意的な損出しや益出しを防止するため、上記のような資産の移転(「寄附修正事由」といいます。)がある場合には、子法人株式等の帳簿価額の修正が義務づけられています。

 すなわち、親法人が有する子法人の株式について寄附修正事由が生ずる場合には、「受贈益の額×持分割合-寄附金の額×持分割合」の金額を利益積立金額に加減算し(法令9①七、9の2①五)、その寄附修正事由が生じた時の直前の帳簿価額にその金額を加減算する(法令119の3⑥)こととされています。

 では、孫法人が寄附をしたときの課税関係はどうなるでしょうか。実は、この寄附修正が求められるのは、1段階だけであり、それ以上の簿価修正は不要とされているので、親法人は子法人株式の簿価修正を行う必要はありません。

 例えば、図2のように、孫法人1が孫法人2(※2)に資産を無償で移転しても、子法人が子法人の有する孫法人株式の帳簿価額だけを修正すればよく、親法人が有する子法人株式については、簿価修正しなくてもよいことになっています。

 したがって、この状況で、親法人が子法人株式を譲渡すれば、従前と同様、譲渡損や譲渡益が損金や益金に含まれることとなりますので、株式売却を含めたグループ再編等の場合には注意が必要です。

1

※1 単純化のため「簿価純資産=時価」としています。以下同じです。

※2 いずれも完全支配関係のある孫会社を想定しています。

2010年6月30日 (担当:後 宏治)

ページトップへ