個人が平成21年中に取得した土地等について先行取得土地等の届出書を提出する際には一考が必要な場合も
2009年6月30日UAPレポートでご紹介したとおり、不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき業務を行う個人が平成21年中に土地等を取得し、一定の要件を満たす場合には、平成22年3月15日までに租税特別措置法第37条の9の5第1項の規定による先行取得土地等の届出書を提出しておくことがおすすめです。取得年の翌年以降10年間、土地等の譲渡益(事業の用に供しているものに限られます。)について最大8割の課税の繰延べができる効果に加えて、特例の適用を実際に受けるか否か、特例の対象とする土地等が複数ある場合の選択について後日柔軟な対応が可能なことがその主な理由です。
ただし、平成22年中にも土地等を取得する予定がある場合には、「平成21年中に取得した先行取得土地等と平成22年中に取得した先行取得土地等とがある場合には、まず平成21年中に取得した先行取得土地等から特例を適用する(措法37の9の5⑥)」ことに留意が必要です。つまり、同一年中に取得した先行取得土地等については、納税者により特例の対象となる土地等を選択することが可能ですが、取得年を異にする先行取得土地等間では、納税者の選択が認められておりません。次に具体例で考えてみます。
例)① 平成21年中に取得した先行取得土地等につき届出をした場合
・平成21年 土地Aを200で取得(先行取得土地等届出有;事業用)
・平成22年 土地Bを200で取得(先行取得土地等届出有;事業用)
・平成23年 土地甲(平成15年150で取得;事業用)を250で譲渡
譲渡所得: 250 - 150 - *80 = 20
所得税等: 20 × 20% = 4
*繰延繰延利益金額:
(250-150)×80%=80≦200(土地A取得価額) ∴80
特例適用後の土地Aの取得価額 200 - 80 = 120
・平成25年 土地Aを300で譲渡
譲渡所得: 300 - 120 - *108 = 72
所得税等: 72 × 39%※1 = 28.08
*繰延繰延利益金額:
(300-120)×60%※2=108≦200(土地B取得価額) ∴108
税負担計: 4 + 28.08 = 32.08
例)② 平成21年中に取得した先行取得土地等につき届出をしない場合 ・平成21年 土地Aを200で取得(先行取得土地等届出無;事業用) ・平成22年 土地Bを200で取得(先行取得土地等届出有;事業用) ・平成23年 土地甲(平成19年150で取得;事業用)を250で譲渡 譲渡所得: 250 - 150 - *60 = 40 所得税等: 40 × 20% = 8 *繰延繰延利益金額: (250-150)×60%=60≦200(土地B取得価額) ∴60 特例適用後の土地Bの取得価額 200 - 60 = 140
・平成25年 土地Aを300で譲渡 譲渡所得: 300 - 200 - *60 = 40 所得税等: 40 × 39% = 15.6 *繰延繰延利益金額: (300-120)×60%=60≦140(土地B取得価額) ∴60
税負担計: 8 + 15.6 = 23.6
上記設例では、短期間で譲渡する土地等を先行取得土地等として選択した結果、短期譲渡所得が増加し、結果として所得税等の税負担が過大となっています。現実問題としては、将来の土地等の売却見込みが現時点で決まっているケースは少ないため、設例のような判断を現時点で下すことは困難ではありますが、もし売却スケジュールがはっきりしている場合等では、先行取得土地等の届出書を提出する前に一考の余地がありそうです。
※1 譲渡があった年の1月1日における所有期間が5年以下のため短期譲渡所得に該当 ※2 平成22年取得の先行取得土地等のみの場合には60%
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