2009年10月26日

一般社団・財団法人の保有不動産を活用するビジネススキーム

 新公益法人制度の全面施行に伴い従来の公益法人は特例民法法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」といいます。)41、42)となり、平成25年11月30日までに、公益社団・財団法人又は公益社団・財団法人以外の一般社団・財団法人(以下「一般法人」といいます」。)への移行申請につき行政庁から認定又は認可を受けることが必要となりました。

 公益法人infomationサイトの公開情報によれば、平成21年10月20日時点の移行認定・認可申請数は307法人ですが、そのうちの70法人(約23%)が一般法人への移行申請をしています。新制度で公益認定を受けるには、ガバナンスの強化や公益目的事業比率50%以上などの厳しい基準を維持し続けなければなりません。それが困難と見込まれる場合などは、一般法人への移行も検討する必要があります。

 一般法人に移行する場合には、公益目的支出計画を作成する必要があります(整備法119)。公益目的支出計画とは、移行時点の純資産額を基礎に計算した公益目的財産額に相当する金額を公益の目的のために消費し、零にしていく計画のことをいいます。

 公益目的支出計画を実施する事業(以下「計画実施事業」といいます。)は赤字の公益目的事業になりますので、計画実施事業以外の公益目的事業や収益事業などの黒字事業からの収入で従来どおり資金繰りを支えることになります。一般法人は、制度改正前のように公益事業の規模を総支出額の2分の1以上にすることなどの制約を受けずに事業を行うことができますので、この移行を機に、黒字事業による補填をもっと効果的に、効率的に行うことが可能となります。その一例として、これまで制約を受けていたため非効率的な運用しかできなかった保有不動産を信託の活用等で収益物件化することなどが挙げられます。遊休土地であれば新規の収入源の確保につながり、保有建物であれば管理コスト低減による収益力向上につながります。これらは信託の仕組みなどを活用すれば効果的に実現でき、キャッシュ・フロー改善に大いに寄与すると考えます。このビジネススキームを組むのは、不動産運用ノウハウをもつ不動産事業者や信託会社などが適任なのではないでしょうか。


●税制上の注意点

 一般法人は、法人税法上、非営利性が徹底された法人など一定の要件を満たすもの(以下「非営利型法人」といいます。)と、非営利型法人以外の法人(以下「営利型法人」)に分けられます(法法2九、九の二)。非営利型法人と営利型法人では、みなし寄付金がない点、登録免許税・利子等の源泉所得に課税がある点及び特定公益増進法人に該当しないので寄付金優遇の対象とならないという点は共通しますが、非営利型法人は収益事業課税、営利型法人は全所得課税という点で大きく異なります。

 全所得課税である営利型法人の場合、計画実施事業による損失とそれ以外の事業による利益との損益通算が可能になるのではと思われるかもしれません。しかし、公益目的支出計画が完了するまでの期間は計画実施事業による損失は法人税の所得の金額の計算上、損金不算入とされます(法令131の5⑤)。

 すなわち、公益目的支出計画が完了するまでの期間は前段のような保有不動産の有効活用などの収益事業から生じた所得には計画実施事業で生じた欠損を充当できませんので特に留意が必要です。


2009年10月26日 (担当 栗田 倫也)

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