2009年10月26日

相続税の納税猶予を受けるための厳しい要件
~甥姪の結婚相手が所有する会社が要件を満たすかにも注意~

 非上場株式等に係る相続税の80%が納税猶予される要件の一つに、対象となる会社(=認定承継会社)の要件があります。その具体的な内容は、特例を受けようとする会社が、相続開始のときに、①経済産業大臣認定を受けた中小企業者であること(措法70の7の2②)、②その会社の株式が非上場株式等であること(措法70の7の2②一ハ)、③その会社が風俗営業会社でないこと(措法70の7の2②一ニ)等で、対象会社はこれらの要件をすべて満たす必要があります。

 注意したいのは、①~③の要件は、納税猶予の対象となる会社だけではなく、その特別子会社も含めて判定する、(措令40の8の2⑨三、措法70の7の2②一ハニ)ことです。つまり、特別子会社が、中小企業者かつ非上場会社かつ非風俗営業会社でないと、特例の適用はありません。

 特別子会社とは、会社並びにその代表者及び代表者に係る同族関係者が総株主等議決権数の50%を超える議決権の数を有する会社をいい、また、同族関係者は、会社の代表権を有する者の親族、内縁の妻、使用人等と幅広い概念です(措令40の8の2⑧)。

 したがって、特例の適用を受けるためには、相続開始時に、親族等が議決権の50%超を有する会社の存在を確認し、その会社が、大会社でないか、上場していないか、風俗営業をしていないかを調査する必要があります。

 親族とは6親等以内の血族および3親等以内の血族をいいます(民法725)ので、実務的に大変なのは、代表者のおじやおば、いとこから甥姪、さらには、配偶者の兄弟姉妹にいたる広い範囲の「遠い親戚」が有する株式の保有状況を把握しなければならないことです。たとえば、はとこ(六親等)が上場会社の議決権の50%超を保有するオーナーであったりすると、特例の適用はありません。また、後継者の子供が大会社などのオーナーと結婚していたりすると特例の適用はないため、本特例の適用を検討している場合には、子供の嫁ぎ先にも注意を払わなければなりません。

 さらに、納税猶予の申告期限から5年の間に、特別子会社が風俗営業会社になった場合には、納税猶予が打ち切られます(措法70の7の2③十六、措令40の8の第29項)。

 したがって、相続税の申告期限から5年間は、当初の特別子会社が風俗営業会社になっていないこと等を継続して確認していくとともに、風俗営業会社が特別子会社に入らないように注意する必要があります。

 たとえば、5年の間に、代表者の甥や姪の子(五親等)や孫(六親等)が風俗営業会社のオーナーとなったり、そうでなくても、ひ孫のような3親等内の親族が風俗営業会社のオーナーと結婚をしてしまうと、納税猶予は打ち切られるため、どのような人が親族に入るかについても細心の注意が必要です。

 あまりに遠い親戚が所有する会社によって特例の適用が左右される点は、実務家から相当強い批判がありますが、明文で法定されているため、従わざるを得ません。実務的には事前に十分な調査が必要になるので早めの対応が必要です。


2009年10月26日 (担当 後 宏治)

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