2009年9月16日

会社分割の対象にはできない遊休不動産

 会社法において会社分割の対象となるのは、「その事業に関して有する権利義務の全部又は一部(会社法2二十九、三十)」であり、旧商法のように有機的一体性は要件とされていません。

 そのため、人的要素が承継されない財産のみの承継も可能となっています。もともと法人税法では、完全支配関係の継続見込みがある者間の分割であれば、有機的一体性を具現化した要件(主要資産負債引継要件、従業者引継要件、事業継続要件)を満たさなくても適格分割とされていたため(法法2十二の十一イ)、グループ会社間での会社分割は、会社法になってからより使い勝手のよいものとなっていました。

 こうしたことから、「100%の支配関係があればどんな資産でも分割できる。」と誤解する向きもありますが、分割の対象となるのは、あくまでも事業に関して有するものに限られます。事業に用いられていない遊休不動産のような財産は会社分割の対象とはなりません※1,※2。会社法上の分割ではない場合には、税務上も適格分割には該当せず、通常の譲渡として譲渡損益の計上が必要となる場合もあると考えられますので留意したいものです。


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※1 葉玉匡美『新・会社法100問〔第2版〕』(ダイヤモンド社、2006年)535頁

※2 長島・大野・常松法律事務所『アドバンス新会社法』(商事法務、2005年)619頁


2009年9月16日 (担当 平野 和俊)

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