2009年7月28日

借地権と底地の同時信託と混同特例

個人が所有する土地の上に同族法人が借地権者として建物を所有しているケースが往々にして見受けられます。このような土地を、底地権者である個人と借地権者である同族法人が、同一の受託者に信託した場合には、その賃貸借関係はどうなるのでしょうか。

まず、民法規定によれば、賃貸人の地位と賃借人の地位が同一の受託者に帰属しますので、原則として賃貸借関係は混同によって消滅します(民法520)。しかし、信託財産は、固有財産や他の信託財産から独立した別個の財産であって、実質的にはその経済的な利益は受益者に帰属するものであることに鑑みて、それぞれの信託行為が別々に行われた場合には、信託法の特例により、民法規定にかかわらず賃貸借関係は消滅しないとされています(信託法20③三)>※1

一方、底地権者と借地権者が同一の信託行為により信託設定するときは、信託法の特例に該当せず、民法規定どおり原則として賃貸借関係は混同によって消滅すると考えられます。そして税務上は、それぞれの受益者がその受益権の内容に応じた信託財産を有するものとみなされ(法令15④)、『平成19年度版改正税法のすべて』によれば、ある受益者は信託財産に属する土地の底地権を有し、他の受益者はその土地の借地権を有するとみなされる場合もあるとされています。このように、法律上は賃貸借関係が消滅しても、税務上は賃貸借関係を認識できる可能性があるとされていますが、例えば賃料水準の見直しをすべき際に、私法上どのような手続きをしたらよいのか、そしてそれが税務上認められるものなのか、よく分かりません。実務上このような場合には別々の信託行為としてもらいたいものです。


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※1 受託者は、将来的に例えば賃貸借契約内容を変更するときは、その行為は利益相反行為に該当しますので、その行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得る等の必要があります(信託法31①②)。

2009年7月28日 (担当 平野 和俊)

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