非上場株式等についての納税猶予制度と小規模宅地等の特例は
完全併用です
平成21年度税制改正法案が平成21年3月27日に成立し、別段の定めがあるものを除き平成21年4月1日より施行されました。本年度税制改正における目玉のひとつとして、非上場株式等についての相続税および贈与税の納税猶予制度(措法70の7、70の7の2~4)が挙げられます。そこで、今回は非上場株式等についての相続税および贈与税の納税猶予制度について小規模宅地等の特例※1(措法69の4)との適用関係にフォーカスを当てます。
非上場株式等についての相続税および贈与税の納税猶予制度について小規模宅地等の特例との適用関係が気になるところでしたが、両制度の重複適用が認められました。これまで非上場株式等に係る相続税および贈与税に関する特例としては、特定同族会社株式等について相続税の課税価額を10%減額するという特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例(旧措法69の5)と相続時精算課税制度の要件の緩和、500万円の贈与税の特別控除を定めた特定同族株式等の特例(旧措法70の3の3、旧措法70の3の4)がありましたが、いずれの特例も小規模宅地等の特例との完全併用が認められていませんでした※2ので、この点で非上場株式等についての相続税および贈与税の納税猶予制度は使い勝手が良くなったと言えます。
例えば、事業の後継者以外の相続人等に対して小規模宅地等の特例を優先的に利用させることで、非上場株式等についての相続税および贈与税の納税猶予制度を利用しつつ後継者の非上場株式等の承継を円滑に進めることもできるでしょうし、相続税の総額を減らして相続人等全員の税負担を減らすことができる小規模宅地等の特例のメリットをフルに享受することもできます。
ところで、平成21年度税制改正法案の附則において税制の抜本的な改革に係る措置として「資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対応等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討すること。」と記載されていることには、依然として注意が必要です。平成21年度税制改正では導入が見送られましたが、相続税について遺産取得課税方式への変更の可能性(UAPレポート2008年1月29日参照)が伺われます。遺産取得課税方式が導入された場合には、小規模宅地等の特例について、同一人における非上場株式等についての相続税および贈与税の納税猶予制度との併用不可や控除額の変更等、所要の見直しがされることも予想されます。
ともあれ、現状は非上場株式等についての相続税および贈与税の納税猶予制度は小規模宅地等の特例が完全併用可能ですので、経済産業大臣の確認、事業継続要件、これから明らかにされる政令や通達等準備、確認すべき事項は多いですが、いざ相続という時に備えて事前に検討しておく価値はありそうです。
※1 一定の事業、居住用の宅地等について一定の面積まで相続税の課税価格の
最大80%が減額されます。
※2 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例については、
部分併用が認められ、特定同族株式等の特例については、併用が認められて
いませんでした。
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