一般財団法人を家族財団として活用するスキームの相続税課税関係
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が平成20年12月1日に施行され、公益性を有しない一般財団法人を設立することが可能になります。これによりヨーロッパの資産家が一族の財産承継目的のために活用している家族財団を日本においても設立することが可能となります。
本稿では一般財団法人を非公益の家族財団として活用した場合の相続税の課税関係について検討してみます。
まず資産家Aが、遺言により金銭を拠出して一般財団法人を設立するものとします。
一般財団法人は評議員を3人以上、理事を3人以上、監事を1人以上とする必要がありますので、これらをすべて資産家Aの身内から選任します。そして実質的には資産家Aの子供Bがこの一般財団法人を支配し、子供Bの死後はその子孫がこの一般財団法人を支配していくものとします。
ここで相続税の課税関係を検証すると、平成20年度税制改正により、一般財団法人のような持分の定めのない法人に対し財産の遺贈があった場合において、当該遺贈により当該遺贈をした者の親族の相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、当該法人を個人とみなしてこれに相続税を課するとする規定がおかれました(相法66④)。
本ケースは、資産家Aの親族の相続税が不当に減少する結果となると認められると考えられますので、一般財団法人は相続税を負担せざるを得ないと考えます。なおこの場合、一般財団法人においては、遺贈に係る受贈益に対して法人税等が課されますが、当該法人税等は、上記で課される相続税から控除されることにより二重課税は排除されることになっています(相法66⑤)。
このようにみると一般財団法人を活用したスキームには何らのメリットも感じられませんが、ポイントはその後の課税関係です。子供B死亡時に子供Bの一般財団法人に対する実質的な支配権を相続税法上の課税財産とする明確な規定がありません。
子供Bの子孫は、一般財団法人の実質的な支配権を取得しても、相続税を納税する義務はないのでしょうか、それとも当該実質的な支配権は「金銭に見積もることができる経済的価値のあるもの(相基通11の2-1)」として相続税法上の課税財産となるのでしょうか。興味深い論点です。
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