2008年7月30日

持株会社はOK、不動産管理会社はNG ~自社株式の80%納税猶予特例対象会社~

多くの中小企業の事業承継に影響を与える「経営承継円滑化法」が平成20年10月1日から施行されますが、その政省令が平成20年7月28日に明らかになりました。本省令案はパブリックコメントに付され一般からの意見が1ヶ月間公募されており、その後確定する見込です。

以前から、「自社株80%減額特例の対象となる会社から『持株会社』や『不動産管理会社』が除かれるのか否か」が実務界の関心を集めていました。というのも、平成20年度の税制改正において、個人資産の管理等を行う法人の利用等による租税回避行為を防止する措置が講じられる旨が明記されていたからです。

今回明らかになった政省令には、その詳細が定められています。

ただ注意したいのは、この政省令は中小企業庁所轄の「経営承継円滑化法」に関する省令であり、これとは別に、「税制において独自の適用除外要件が将来定められる予定だ」、ということです。すなわち、適用対象“外”となる資産管理会社は、第1段階として「経営承継円滑化法」の政省令に定められ、第2段階として租税法によりその他の要件が定められるという構造になっています。

さて、経済産業大臣の認定の対象“外”となる会社は、上場会社、経営承継円滑化法の中小企業に該当しない会社である大企業や医療法人等、風俗関連事業を行う会社等の他、次のような会社とされています。

① 総収入金額がゼロの会社
② 常時使用する従業員がゼロの会社
③ 資産保有型会社
④ 資産運用型会社

①と②の会社の類型の意義は明らかですが、③と④の会社が具体的にどのような会社かが問題です。

③の資産保有型会社とは、総資産に占める「特定資産」の合計額の割合が70%以上の会社をいい、「特定資産」とは、有価証券、不動産、現預金、ゴルフ場会員権、貴金属等をいいます。いわゆる、非公開会社でよく見られる持株会社や不動産管理会社がこれにあたりますが、これらがすべて認定対象“外”会社となるわけではありません。

まず、持株会社ですが、持株会社方式によるグループ運営を行っている一部の非公開会社の実態を踏まえて、「特定資産」に係る有価証券からは「実質的な子会社株式」が除かれることになっています。これにより、対象“外”会社は株式投資をしている会社のみであり、グループ事業を統括する一般の持株会社は経産大臣認定の対象となります。

次に、不動産の管理会社ですが、「特定資産」に係る不動産からは、自社利用不動産が除かれる取扱いになっています。したがって、賃貸物件等の投資不動産を70%以上保有する不動産管理会社が、経産省大臣の認定対象“外”となります。そうすると、一般によく見られる不動産管理会社は、特例の対象“外”になってしまうケースが多くなると予想されます。

さらに、④の資産運用型会社とは、総収入金額に占める「特定資産」の運用収入の合計額の割合が75%以上の会社をいいます。

これは、運用株式の配当等収入および不動産賃貸等収入「以外」の収入が25%以上なければならないことを意味します。たとえ運用株式や投資不動産以外の資産を増やして③資産保有型会社の70%の制限にひっかからなくても、この④資産運用型会社の規定はかなり厳しい基準となりそうです。今後は資産保有割合だけでなく運用収入割合にも注意が必要です。

以上によって、資産管理会社が③資産保有型会社および④資産運用型会社とされた場合には、次のみなし規定により認定対象会社となるルートを検討すべきでしょう。

すなわち、①オーナー死亡時点で3年以上の事業継続、②物理的な事業拠点を有する、③常勤従業員5人以上、④商品販売等の事業を自己の名義・計算で行うことの4条件のすべてを満たすと、資産保有型会社及び資産運用型会社に該当しないものとみなされます。

実務上は、このみなし規定により、経産省大臣の認定を受けることが多くなるものと予想されます。

以上が「経営承継円滑化法」の要件ですが、租税法における特例適用対象“外”となる会社については、未だその概要すら判明していません。税制は、平成20年の秋から冬にかけて明らかになってくる見込みですが、事業承継を考える人にとっては要注目です。

2008年7月30日(担当:後 宏治)

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