2007年11月28日

親会社株式の取得に係る課税関係が三角合併の障害に

平成19年5月1日から解禁された三角合併は、もっぱら外国企業である親会社の株式を対価として国内企業を買収する場合に用いられることが想定されている制度ですが、国内企業が三角合併を活用するメリットも存在します。

代表的な活用場面は、国内親会社Aが適格分社型分割によって創設された100%子会社Bにグループ外会社であるC社を吸収合併させる場合で、今後も組織再編等が予想される企業グループが利用するケースです。

B社とC社の単純な吸収合併では、C社株主にB社株式を交付しなければならず、A社とB社との間の100%の完全支配関係はなくなってしまいます。A社グループにおいて今後の再編をにらみ100%の完全支配関係を維持したいニーズがある場合には、単純な合併でなく、三角合併を用いることになります。

すなわち、100%子会社であるB社の株式の代わりに親会社であるA社株式をC社株主に交付することによって、完全支配関係が維持できるのです。

もちろん、同様な結果は株式交換後に合併することでも実現できるのですが、何らかの理由により株式交換に係る株主総会決議が親会社でとれない場合には、三角合併スキームのメリットが効いてきます。

このように国内企業においても三角合併スキームを活用するニーズはありますが、実務上の問題は親会社株式であるA社株式を子会社B社がどのように取得するかです。

すなわち、三角合併の手順では、①子会社Bが親会社Aの株式を取得し、②その後、B社がC社を吸収合併し、その対価として取得した親会社(=A社)株式を交付する、ことになりますが、①の株式の取得をいかに効率よく行うかが実務上の課題となっています。

通常であれば、子会社Bが外部または親会社から資金を借入れ、その資金をもって親会社Aの株式を時価で取得することになります。

しかし、三角合併の最大のメリットは、資金を用意することなく「株式で」グループ外のC社を買収することにあります。

そこで、資金負担なく親会社株式を子会社が取得できないかが問題になります。

この点、会社法上様々な工夫が議論されていますが、現時点で解釈上実行可能だとされるほぼ有力な方法の一つが、「備忘価額(1円)による新株発行」です。

この方法は、親会社Aが子会社Bに1円で新株を発行し、B社はその取得した新株をC社株主に交付するというものですが、会社法上、新株発行と吸収合併を併せて観察すれば時価新株発行に見合う財産が最終的にはB社に帰属するため、親会社Aの既存株主には経済的損失が発生ぜず、有利発行に当たらない可能性が強いとされています。

ただ、備忘価額方式のネックは税制です。

現在の税制では、備忘価額によって新株発行等を行うと、親会社から子会社への経済的な価値の移転があるとして子会社に受贈益が生ずることになっています(法令第119条第1項、法基通2-3-7)。
資金負担なく子会社に親会社株式を取得させる会社法上の手法には有効なものが他にはあまりないため、この規定による受贈益課税が障害となり、せっかくの三角合併が利用されづらくなっています。
この点については、解釈で対応するには限界があるため、租税法令や租税通達等で、受贈益課税を行わない旨を明確にすべきだと思われます。

2007年11月28日(担当:後 宏治)

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