2007年5月25日

平成19年度税制改正を受けて減価償却に関する当面の監査上の取扱いが公表されました

既報の通り、平成19年度税制改正において減価償却費の損金算入限度額の規定が大幅に改正されました(UAPレポート:2月22日)。この改正を受けて、平成19年4月25日、日本公認会計士協会から「監査・保証実務委員会報告第81号 減価償却に関する当面の監査上の取扱い(以下、「本件報告」という。)」が、減価償却項目に関連する今後の会計処理の監査についての新たな実務指針として公表されました。

減価償却は、適正な期間損益計算を行うために合理的に決定された一定の方式に従い、毎期計画的、規則的に実施されなければなりません。これは企業会計上、正規の減価償却といわれるものであり、一般に公正妥当と認められる減価償却の基準に基づき、自主的に行われるべきものであるとされています。この場合において、当該資産の耐用年数及び残存価額の決定においては、各企業が独自の事情を考慮して合理的・自主的に決定すべきものだとされています。
 しかし、多くの企業が法人税法に定められた耐用年数及び残存価額を用いる現状を鑑み、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理する場合においては、企業の状況に照らし、不合理と認められる事情のない限り、当面、監査上妥当なものとして取り扱うことができることとされています。
 
さて、平成19年度税制改正において、定額法及び定率法による減価償却費の損金算入限度額の計算方法が大幅に改正されましたが、法人税法の規定は課税所得金額の計算を目的としたものであり、適正な期間損益計算を目的とする会計処理において強制適用されるものではありません。従いまして、会計上は平成19年度税制改正後においても、改正前の定額法・定率法の採用が否定されるべきものではないと考えられます。その結果、会計上は改正前の定額法又は定率法(以下「旧定額法」「旧定率法」という。)、改正後の定額法又は定率法(以下、「新定額法」「新定率法」という。)の4通りの償却方法の選択肢があることになりますが、従来採用していた減価償却方法を変更する場合には、会計方針の変更に該当するところから、「正当な理由による会計方針の変更(監査委員会報告第78号)」に定めるところに留意する必要があることになります。

不動産証券化SPCにおいては、有形固定資産として計上される減価償却資産は建物のみであることが通常であるため、以下、定額法における取扱いについてのみまとめてみます。

① 新規取得資産についての取扱い
新規取得資産について新定額法を採用することは、同一種類同一用途の減価償却資産について、類似の減価償却方法を採用するものと認められるため、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更として取扱われます。ただし、会計方針の変更に該当致しますので、財務諸表への注記が必要になります。
また、新規取得資産について新定額法の規定によらず旧定額法の採用を継続した場合には会計方針の変更には当らないことになりますので、特段の注記は不要になります。

② 既存資産についての取扱い
イ 減価償却方法について
既存資産について、新定額法に減価償却方法を変更することは、税制改正だけでは正当な理由による会計方針の変更には該当しないことになりますので留意が必要です。
ロ 残存簿価について
当該資産が引き続き事業活動に利用されている場合には、従来の処理方法と変わらないことを原則としますが、償却可能限度額まで償却が進んだ既存資産について、会計上、改正法人税法の規定に従って残存簿価を5年間で均等償却を行っている場合には監査上妥当なものとして取扱われることとなりますが、その場合には、追加情報としての開示(注記)と、該当するすべての資産について同じ処理方法を適用することが必要になります。

2007年5月25日(担当:石渡正樹)

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