2007年5月25日

適格合併等と相続開始前3年以内取得土地等の評価

組織再編法制や同税制が整備されたため、非上場会社であっても、事業承継をはじめとする様々な目的のために合併や分割が利用されることが多くなってきています。
これら合併等は適格合併等で行われることが通常ですが、その効果は、移転する資産が簿価で引継がれることです。

ところで、適格合併直後に相続が発生した場合、非上場株式の純資産価額の算定上、「合併等により取得した土地等については適格合併であっても路線価評価を採用できない。」という思わぬ不利益が生ずることが実務において指摘されており、「合併後3年間は類似業種比準価額が使えない。」という取扱いに対する怒りも含め、中には、「3年間は死ぬなということか!」という憤慨する人もいます。

以下、簡単に非上場株式の純資産価額の評価と合併との関係を整理してみます。

まず、取引相場のない株式を評価する場合の純資産価額は、原則として、相続税評価額によって計算した金額とされており、具体的には、評価会社が所有する土地等は、路線価方式で評価することになっています。

ご存じの通り、現在の土地の路線価は通常の取引価額(=いわゆる時価)の80%相当額とされているため、通常、時価よりも路線価評価額のほうが有利になることが多くなっています。

ところが、評価会社が課税時期前3年以内に取得した土地等や家屋等の価額は、①課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとされており、②その土地等や家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとされています。すなわち、相続開始前3年以内に取得した土地等は、路線価ではなくて時価で評価しなければなりません。

この規定は、合併等によって土地等を取得した場合にも適用されており、したがって、相続開始前3年以内に合併によって取得した土地等は路線価ではなく、時価で評価する必要があります。

問題は、法人税法上の適格合併等により取得した土地等についても、有利な路線価評価を採用することができず、高めの時価評価を余儀なくされてしまうことです。

そもそも、相続開始前3年以内に取得した土地等を時価で評価することとされたのは、時価の把握が容易であるからです。すなわち、30年前に取得した土地等よりも3年内に売買により取得した土地等の相続時の時価を把握することは比較的容易であり、さらに、帳簿価額が時価と見て差し支えないケースが多いだろうとの判断があるのです。

他方、適格合併の場合には、土地等は被合併法人等の取得価額が引き継がれるため、時価を把握する必要性はかなり低い場合がほとんどです。そうすると、適格合併等をせずに相続が発生した場合に比較すると、時価情報が容易に入手できないという状況は同じであるにもかかわらず、適格合併等の場合には、不動産鑑定等により(実務上は、路線価価額を80%で割り戻すことも行われています。)時価を算出して相続税評価額を算定しなければならないという不公平が生じます。

このような事態が生じているのは、法人税法などの組織再編税制に相続税法における財産評価通達が対応を怠っているからです。適格組織再編においては資産の支配の継続を認めて譲渡損益を繰り延べることとしている趣旨をふまえ、財産評価基本通達においても、適格組織再編によって取得した土地等についても、通常どおり、路線価で評価することが必要だと考えます。

2007年5月25日(担当 後 宏治)

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