オーナー社長が第三者株主から自社株を購入した場合にみなし贈与課税 ~実務への影響大きい平成19年1月31日東京地裁判決~
オーナーが従業員などの同族関係者以外の個人から自社株を原則的評価額よりも相当程度低い価額で購入することは実務上よく行われています。当該取引が行われた場合には、条文を字面通り読むと相続税法第7条の対象となり、原則的評価額と譲渡価額との差額について、譲受者に贈与税が課税される理屈になります。ところが、同族間取引ならいざしらず、第三者間取引の場合には、相続税回避目的で取引が行われる場合などを除き、実務上は贈与税課税されない、というのが一般的な理解だったと思います。
ところが、東京地方裁判所は平成19年1月31日、代表取締役でもある創業者オーナーが合計116名の同族関係にない第三者株主から自社株を原則的評価額の5.7%ないし21.8%で購入した事案で、原則的評価額と譲渡価額の差額を贈与により取得したものとみなして、贈与税の決定処分を認容しました。
原告納税者は、「独立第三者間取引においては、取引当事者が恣意的な価格設定を行った場合でない限り、実際の取引価額が真実の取引価値すなわち時価であると認識され、取引当事者間に実質的には贈与があったということはできない。」、「本件各譲受価額は、売主である本件各譲渡人と、買主である原告との間でのせめぎ合いにより形成された価額であり、本件各譲受日における本件各株式の客観的価値である」と主張しました。
これに対して裁判所は、本件株式譲渡に取締役会の承認を要することを踏まえたうえで、「本件各譲受けは、終始原告の主導で行われたものであり、本件各譲渡人は、原告と対等に売却価額等売却の条件について交渉できる立場になかったものと認められるから、本件各譲受価額が、本件各譲渡人と原告との間でのせめぎ合いにより形成されたと認めることはできない。」と判示しています。
オーナーが自社株を購入する場合のほとんどが、本件のようにオーナー主導で行われるものと推察されます。今後オーナーが自社株を原則的評価額よりも相当程度低い価額で購入する際は、贈与税が課せられる事態を十分に予見したうえで実行する必要があります。
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