中間法人法の廃止が証券化スキーム実務に与える影響について
多くの証券化スキームにおいてSPVの株式等を保有するヴィークルとして利用されてきた有限責任中間法人ですが、本年6月2日に公布された一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「新法」という)及び一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」という)の施行(施行日未定:公布の日から2年6ヶ月以内(新法附則1))により、その根拠法である中間法人法が廃止されることになりました(整備法1)。
新法施行後の証券化スキームにおいては、有限責任中間法人に代わるヴィークルとして一般社団法人の利用が予想されておりますが、両者はいくつかの点で異なる特徴を有しているため、予め検証をしておくことが必要になります。
有限責任中間法人には、①社員(議決権者)と資金拠出者(基金債権者)の分離が可能である、②清算時における基金債権者の権利が他の債権者に劣後する、③社員が有限責任である、といった特徴があります。有限責任中間法人が多くの証券化スキームで利用されてきたのは、これらの点が倒産隔離を図る上で有用であったことに起因していると考えられます。一般社団法人も同様の上記の特徴を有しております(新法27、131、145、236)ので、有限責任中間法人に代わる新たなヴィークルとしての利用が可能であると考えられます。ただし一般社団法人は有限責任中間法人と異なり、①社員の充足数が1名である(新法148四。※1)、② 理事会設置一般社団法人又は会計監査人設置一般社団法人を除き、監事の設置が任意である(新法60②、61)、③貸借対照表(大規模一般社団法人にあっては貸借対照表及び損益計算書)の公告義務がある(新法128①)、④基金の募集が任意である(新法131)、⑤事後設立規制(旧中間法人法37)に相当する規定がない、といった特徴を有します。基金の募集が任意になったこと並びにSPVの株式等を取得する際の事後設立規制に係る諸手続が不要になったことで、証券化スキームの開始時点での負担が軽減されることになることになりますが、一方で貸借対照表の公告負担が新たに発生することになります。
※1 設立時の社員が1名でよいかどうかについては不明(設立時に定款を“共同して”作成しなければならない(新法10①)旨が規定されているため。)。
また、既存の有限責任中間法人は新法施行後は、一般社団法人として存続することになり(整備法2①)、新法の適用を受けることになります。既存の定款・社員名簿・基金・社員・理事及び監事についてはそのまま一般社団法人における定款・社員名簿・基金・社員・理事及び監事となるため(整備法2②、5、7、13、18)、定款を作成し直したり、理事及び監事を選任したりするなどの特段の手続は不要になります。登記についても既存の有限責任中間法人の登記は、特段の登記申請を要せず、一般社団法人としての登記になります(整備法22①②)。また、既存の有限責任中間法人についても、施行日以降にその末日が到来する事業年度以降の事業年度に係る貸借対照表については、公告義務が発生することになります(整備法17)ので留意が必要です。
※2 既存の有限責任中間法人スキームと一般社団法人スキームとの比較
有限責任中間法人 | 一般社団法人 | |
社員の充足数 | 2名 | 1名(※1参照) |
監事の設置 | 要 | 任意(一定の場合を除く) |
決算公告義務 | 不要(新法施行後は要) | 要 |
基金 | 最低300万円 | 任意 |
事後設立規制 | あり | なし |
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