2006年2月24日

LLPに現物出資をした場合の課税関係(その1)

平成17年8月1日に施行された有限責任事業組合契約に関する法律(以下「LLP法」)において、「組合員は、金銭その他の財産をもってのみ出資の目的とすることができる(LLP法11)」旨が定められており、現物出資の履行が認められていますが、税務上はどのように取扱われるのでしょうか。

まず、有限責任事業組合(以下「LLP」)の基礎となる民法上の組合(民667~)に対して現物出資を行った場合にどのように取り扱われていたのかを確認します。国税庁課税部が平成13年3月に集録した『資産税関係質疑応答事例集』によると、「民法上の組合を設立するに当り、譲渡所得の基因となる資産を出資した場合」の課税関係は、「出資した資産のうち、その資産を出資した者の持分以外の部分は、他の組合員に譲渡したことになる。」と解説されています。これは、民法668条の「各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する」とする規定に基づくものと考えられます。

一方、LLPは民法上の組合契約の特例に相当し、法制上組合契約としての特徴が保たれています。新設された法人税基本通達14-1-1においても、LLPは民法組合及び投資事業有限責任組合と一緒に任意組合等とまとめて定義され、分配利益額の計算等については民法組合と同じ課税関係となる旨が定められています。従いましてLLPにおける現物出資時の課税関係も、上記の民法組合における課税関係と同様に「出資した資産のうち、その資産を出資した者の持分以外の部分は、他の組合員に譲渡したことになる。」ものと考えられます。

ところで、『平成15年版土地建物等の譲渡をめぐる税務』(財団法人大蔵財務協会)によると、民法上の組合に現物出資をしたにもかかわらず、出資時の課税をしなくてもよいとされるケースが2つ紹介されています。1つは、租税特別措置法通達62の3(6)-1注書に基づくもので、第三者への譲渡時まで譲渡損益に対する課税を繰延べるものとして取扱われる旨が回答されているケースです。もう1つは解散時に出資財産を返還する旨の特約を付した場合に、税務上は譲渡がなかったものとして取扱って差し支えないと回答されているケースです。どちらも特殊な事例ではありますが、これらの取扱いはLLPでも認められるのでしょうか。LLPは民法組合と異なり権利能力なき社団に近い実質的法主体性を有していますので、これらの取扱いが認められる可能性は低いと考えられますが、いずれにしても課税関係の明確化が期待されます。

2006年2月24日(担当:石渡正樹 )

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