2006年2月24日

新会社法における会社分割

昨年7月に公布された新会社法は今年の5月にも施行される見込みです。

新会社法における会社分割では、合併・株式交換・株式移転といった他の組織再編同様内容面・手続面においてさまざまな改正がなされています。

会社分割独自の改正点としては、「人的分割」の廃止があげられます。 現行商法では、会社分割の形式を、分割の対価となる株式が分割会社に対して割り当てられるものを「物的分割」、分割会社の株主に対して割り当てられるものを「人的分割」と規定しています。新会社法では人的分割をその実質が「物的分割+剰余金の配当」にあたるものとして、会社分割の形式を物的分割のみに整理しました。なお、この場合の剰余金の配当には剰余金配当規制はありません。

また、新たに整備された全部取得条項付種類株式を用いることによる非按分型の分割も規定されています。

ここでこの「物的分割+剰余金の配当」が税法ではどのように取り扱われるのかが気になるところです。法人税法上、「物的分割+剰余金の配当」がこれまで通り分割型分割となるのか、または分社型分割となり、当事者間の継続支配の観点から非適格にならざるを得ないのかどうか不明確でしたが、平成18年度の法人税法の改正案によれば、これまで人的分割を意味していた分割型分割の定義を「分割により分割法人が交付を受ける分割承継法人の株式その他の資産のすべてがその分割の日において当該分割法人の株主等に交付される場合の当該分割」としており、「物的分割+剰余金の配当」は分割型分割として取り扱われることが明確になりました。

組織再編共通の改正点では、「対価の柔軟化」が最も影響が大きいでしょう。現行商法では原則として存続会社等の株式以外の資産を交付することは認められていませんでしたが、新会社法では、金銭その他の資産を交付することが可能となり、「金銭交付合併等」または「三角合併等」により多角的な組織再編の可能性が広がります。

ただし、この改正についても、現状の法人税法の取扱いでは非適格に該当するというデメリットが存在しており、税制面からの支援が期待されます。なお、施行時期については敵対的企業買収防止の観点から1年間先送りされました。

手続関係では、大きな流れは変わりませんが、「簡易組織再編の緩和」、「略式組織再編の創設」等の機動的な組織再編を目的とした改正や、新株予約権の承継等の具体的な手続の追加がされています。

なお、経過措置として、会社法施行日後に効力が発生する会社分割であっても、会社法施行日前に分割契約書又は分割計画書が作成されたものについては現行商法の手続により行われますが、登記事項については新会社法によることとされています。これは合併・株式交換等についても同様です。

2006年2月24日(担当:中村 敬)

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