外形標準課税の適用で得をするのはどういう会社か
~いよいよ外形標準課税による事業税の申告・納付が始まります~
平成16年4月1日以後に開始される事業年度からは、期末資本金の額が1億円を超える大法人については、事業税において外形標準課税が適用されることとなりました。従来の事業税は、所得割のみによる課税がされておりましたので、資本の大小とは関係なく、所得が発生しなかった事業年度においては税負担が生じることはありませんでした。
しかし、外形標準課税が適用されることとなりますと、所得割については、税率が軽減されるものの(現行標準税率9.6%→7.2%)、付加価値割(標準税率0.48%)及び資本割(標準税率0.2%)が発生し、所得が発生していない事業年度においても事業税の負担が生ずることとなります。付加価値割の課税標準となる「付加価値」とは、「収益配分額(報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料)」と「単年度損益の額(欠損金等控除前の所得金額)」の合計額のことをいいますので、仮に単年度損益の額がマイナスであっても、そのマイナス額が収益配分額を上回らない限り、付加価値割が発生することとなるわけです。また資本割については、単年度損益の額に関係なく課税されることとなります。
それでは、外形標準課税の適用による実際の税負担への影響はどのぐらいあるのでしょうか。事業税は納付すべき事業年度(つまり翌事業年度)の所得の金額の計算上損金に算入され、法人税等の負担を軽減する効果がありますので、下記の算式によって求められる法人税等の実効税率を算定して、実際の税負担の増減額を検討する必要があります。
これに法人税率30%、住民税の標準税率17.3%、事業税の所得割の標準税率(適用前9.6%→適用後7.2%)を代入致しますと、外形標準課税適用前の実効税率は約40.87%、適用後は約39.54%となり、所得に対する実効税率は下がることになります。これに付加価値割及び資本割を加算して、検討対象とする法人各社の実際の事業税負担を反映させますと、法人税等の負担が増加する法人の方が多くなりそうです。
しかし、単年度損益が大きく、収益配分額や資本金が小さい場合には、税負担が減少するケースもあります。例えば、単年度損益が約5億9,000万円、収益配分額が約2億円の法人でシミュレーションをしたところ、外形標準課税の適用後は、2年間で税負担が約1,400万円減少することとなります(東京都の税率を適用した場合)し、同様の法人が資本金を1億円から1億1,000万円に増資して外形標準課税の適用を受けることとした場合には、約1,100万円減少することとなります。つまり法人税の軽減税率の不適用や住民税の均等割の増加等を考慮しても、なお節税になる場合もあるということですので、実際にシミュレーションを行って資本戦略を検討してみる価値がありそうです。
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