2005年4月 1日

合併等対価柔軟化によって少数株主のスクイーズアウト(追い出し)が可能に

平成17年3月22日に会社法案が国会に提出されました。三角合併の解禁に対する拒否反応から一時は国会提出も危ぶまれましたが、施行日について「合併等対価柔軟化」に関する部分のみを他の部分よりも1年遅らせることで提出に至りました。合併等対価柔軟化とは、吸収合併・吸収分割・株式交換を行うに際して、消滅会社等の株主に対して存続会社等の株式だけでなく、金銭その他の財産を交付することが可能になることをいいます。現在合併等対価柔軟化で最も注目されているのが外国親会社株式を交付する三角合併ですが、「少数株主のスクイーズアウト(追い出し)」が容易になることも注目点です。

現行法においても、対象会社を株式移転した後に完全親会社が対象会社株式を譲渡して完全親会社を解散させてしまう方法や株式交換などを用いて少数株主に端株を与えこれを現金で処理する方法などにより少数株主のスクイーズアウトは可能ですが、その行為自体が違法とされる可能性もありました(藤縄憲一・田中信隆「組織再編行為」商事法務1724号18頁)。合併等対価柔軟化は金銭交付による少数株主の排除を正面から認めるものであり、正当な目的(プロパー・ビジネス・パーパス)による縛りという論点は残るものの、手続き自体の違法性はなくなります。具体的には吸収合併・吸収分割・株式交換時にその対価全部を金銭とすること(以下「対価全部金銭型」という)により少数株主はスクイーズアウトされるわけです。

普及の鍵を握る税制は今後検討されることになりますが、少なくとも対価全部金銭型について課税繰延措置は設けられないと考えられます。具体的に対価全部金銭型合併・分割については非適格となり、消滅会社等の移転資産譲渡益課税並びに消滅会社等の株主に係るみなし配当及び株式譲渡益課税が発生します。これでは現実的に活用することは難しいです。

ところが株式交換では株式譲渡課税繰延措置(措法37の14、67の9)の適用はなくても、そもそも移転資産譲渡益課税やみなし配当といった課税関係は起きないようになっており、対価全部金銭型株式交換でも株式譲渡課税が発生するだけです。従いまして税制改正がない限り少数株主のスクイーズアウトは株式交換によって実行されると想定されます。

実務上少数株主のスクイーズアウトのニーズは高いです。従来でも株式交換によれば100%子会社とすることは可能でしたが、完全親会社の株主構成に影響を及ぼすことから時価総額が大きくない会社にとっては使いにくい面がありました。今まで少数株主の合意を得られずに頓挫していたM&Aも、合併等対価柔軟化によって解決方法ができるということです。マイナス面が語られることが多い合併等対価柔軟化ですが、そういう意味では待ち遠しいですね。

2005年4月1日(担当:平野和俊)

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