2005年4月 1日

小が大を飲むマジック~フジテレビのLBO~

ニッポン放送の経営権取得にめどをつけたライブドアが、次はフジサンケイグループの中核企業であるフジテレビ(以下フジといいます。)の掌握を狙うと報道されています。

ニッポン放送はフジ株式の22.5%を既に保有していますから、単純にあと30%を買い増せば、ニッポン放送はフジの支配権を獲得することができます。フジの時価総額は約7000億ですので、株価が現状のままだとすると、追加で30%を買うためには、単純計算で2100億円の資金が必要です。

規模がはるかに小さい企業が、フジのような大企業を買収することができるのか?普通に考えると無理な話ですが、この買収を可能にするスキームが存在します。すなわち、一部で報道されている、レバレッジド・バイアウト(LBO)がその手法です。

レバレッジド・バイアウト(LBO)とは、被買収会社の資産を資金調達の際の担保とし、買収後に被買収会社の資産により負債を返済するM&Aのことをいいます。簡単にいうと、フジテレビの保有資金を原資に、フジテレビの株を買うことを意味します。

想定される手順は以下のようになると思われます。

1.ニッポン放送が受け皿会社としてフジの資産を担保に資金(2100億)を調達する。
2.ニッポン放送はフジ株を30%買い増し、支配権を獲得する。
3. 支配権獲得後、ニッポン放送とフジは合併する。フジの保有する資金等はニッポン放送の資金等に合算される。
4.合併後、増加した資金等を原資に2100億の負債の返済に充てる。
ここで、フジ単体の流動資産は約2500億で流動負債は700億です。差額の1800億を余剰資金とみなすと、合併により、資金等は1800億増加します。また、ニッポン放送も連結流動資産が780億、流動負債が400億ですから、380億の余資を有します。合計すると、2180億なので、合併後の新会社は、負債として調達した2100億を一挙に返済することが可能です。

もちろん、買収の過程でフジ株の価格が高騰し、資金がもっと必要になる可能性が大きいと思われます。しかし、フジは連結ベースで毎年500億の営業キャッシュ・フローを生み出す優良会社であるため、あと1000億余分にかかったとしても、2年分のフジのキャッシュ・フローで追加融資を返済することが可能です。

気になるのは、3.の合併時の課税関係ですが、50%超の支配権を獲得した後の合併でなので、グループ内組織再編として適格合併となり、特段の課税関係を生じない可能性が大きいものと思われます。

以上の例で注目したいのは、ライブドアには追加的な自己資金は一切必要なく、フジの買収が可能になることです。まさに小が大を飲み込む「マジック」だと言えるでしょう。

2005年4月1日(担当:後宏治)

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